研究課題
基盤研究(B)
我々はいくつかの癌を引き起こすことが知られているMeis1遺伝子が発達途上の小脳顆粒細胞とその前駆細胞で発現することを見出した。この遺伝子を破壊したノックアウトマウスでは、小脳が小さくなり、その内部構造が乱れてしまう。さらにMEIS1タンパク質がPax6遺伝子の発現を誘導すること、誘導されたPAX6がBMPシグナルを促進すること、そしてBMPシグナルがATOH1の分解を引き起こし、その結果として前駆細胞から顆粒細胞への分化を促進することが明らかになった。
神経科学
今回の知見により、これまで個別に明らかにされてきた小脳顆粒細胞の発生の分子機構を、MEIS1というハブによって統合的に理解することが可能となった。これは小脳にとどまらず、様々な脳部位での神経前駆細胞から神経細胞が生み出されるしくみの理解につながると考えられる。また、MEIS1は一部の髄芽腫において異常に強く発現しており、髄芽腫の発症に関与している可能性も考えられるために、今回の研究成果は広く今後の小脳癌研究の発展に寄与すると考えられる。