研究課題
認知症の治療法開発において、これまでアミロイド仮説に則った治療法、すなわち、アミロイドβ(Aβ)の産生抑制やTauのリン酸化抑制を企図した治療法開発の試みはすべて失敗している。単剤での認知症抜本治療薬の開発が理想であるが、高齢認知症患者はAβやTauの異常のみならず、加齢や脳血管障害などの複合的な要因を伴っているため、単剤での治療は困難である可能性がある。従って抗がん剤や降圧薬と同様、多剤での認知症治療が現実的な目標である。米国ではゲノム情報に加え、ライフスタイル・環境要因の観点から患者をサブグループし、適切な医療を実現するPrecision Medicineが進められつつある。治療介入可能な新規危険因子の同定は、認知症治療に直結する確実性の高い研究戦略であると捉えられている。そこで、神経変性と血管変性の両者の性質を備える脳アミロイド血管症(CAA)が認知症発症にどのような影響を与えるか、という課題についてモデル動物を用いて解析した。Tau過剰発現マウスと血管指向性Aβ過剰発現マウス(CAAモデル)を交配した結果、CAAは脳梗塞や脳出血の原因となるのみならず、Tau病理、神経細胞脱落を促進し、認知機能障害を増悪させることを明らかにした。また、CAAモデル動物に対するシロスタゾール投与はAβクリアランスを改善することを先行研究で明らかにしているが、新たに今回の実験で用いた抗糖化剤drug XがAβ凝集を抑制し、CAAを改善させ、空間認知能力を改善させることを明らかにした (特許申請中)。脳血流や脳血管予備能に対する効果はシロスタゾールとdrug Xで相補的であったことから、作用点の異なる2種類の薬剤による多剤併用療法の可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
抗糖化薬drug Xが認知症モデル動物(Aβ過剰発現マウス)の認知機能を改善することが明らかとなったため。
抗糖化薬Drug Xの認知症疾患への臨床応用を目指し、動物モデルを用いたメカニズム解明を進めていく。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 8件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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