研究課題/領域番号 |
15H04271
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
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研究分担者 |
飯田 秀博 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (30322720)
植田 初江 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (40522983)
周 びん 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, その他 (00598774)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳アミロイド血管症 / アルツハイマー病 / タキシフォリン / 認知症 / オリゴマー / 抗糖化薬 / アミロイド |
研究実績の概要 |
背景:認知症の大半を占めるアルツハイマー病は、長らく原因不明とされてきたが、最近の研究でAβの脳血管への蓄積(脳アミロイド血管症)が一因であることが明らかになった。しかし、これまでのアルツハイマー病研究は神経細胞の病態研究が中心であり、脳アミロイド血管症に焦点を当てた治療開発研究は十分になされていなかった。
研究手法と成果:Aβが蓄積してできる「Aβオリゴマー(毒性をもつ立体構造)」が初期の脳アミロイド血管症の主因であると仮定し、アミロイド凝集抑制作用を有する物質「タキシフォリン」を脳アミロイド血管症モデルマウスに投与して、タキシフォリン非投与のモデルマウスおよび正常マウスと比較した。その結果、タキシフォリン群において脳内のAβオリゴマー量は大幅に減少し、脳血流量や認知機能も正常に近い状態まで回復することが明らかになった。具体的には、脳アミロイド血管症のマウス(認知症モデルマウス)にタキシフォリンを投与したマウスの脳内の状況と認知機能障害の程度について、タキシフォリン非投与のモデルマウスおよび野生型(正常)と比較した。その結果、脳内で重積して毒性を呈するAβオリゴマーの量はタキシフォリン投与群が非投与群の4分の1程度にまで減少していた。また、記憶の中枢である海馬へのAβ沈着量も、投与群は非投与群の半分程度であった。また、投与群の脳血流量はほぼ野生型と同等まで回復し、水迷路試験※による空間記憶能テストでも野生型と変わらない結果であった。
今後の展望と課題:タキシフォリンにより脳内Aβが減少しただけでなく認知機能障害も回復させられることが明らかになったため、アルツハイマー病の有効な治療薬候補となると考えられる。今後は認知症新規治療薬としてヒトへの効果を確認するため、治験開始と臨床応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タキシフォリンにより脳内Aβが減少しただけでなく認知機能障害も回復させられることが明らかになり、国際誌に発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
タキシフォリンにより脳内Aβが減少しただけでなく認知機能障害も回復させられることが明らかになったため、アルツハイマー病の有効な治療薬候補となると考えられる。今後は認知症新規治療薬としてヒトへの効果を確認するため、治験開始と臨床応用を目指す。
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