研究課題
本年度は、以下の項目に関して研究を進めた。1. CAST結合蛋白質の同定:これまでに、pull downアッセイを用いて結合蛋白質の同定を進めていたものの、バックが高く、うまくいかなかった。同時に進めていた免疫沈降実験に関しては、免疫沈降されるCASTの量が少なく、こちらも結合蛋白質の同定に至っていない。改善点として、yeast-twoハイブリッドの系を立ち上げるとともに、海馬初代培養神経細胞にタグ付きのCAST分子を発現させ、タグに対する抗体で免疫沈降実験を試みる。2. CASTのリン酸化の解析:CASTのリン酸化がシナプス可塑性を制御していることを明らかにして、論文投稿し、現在リバイス中である。リン酸化されたCASTとそうでないCASTは相反する機能を有することを電気生理学的に確かめた。アクティブゾーンタンパク質のリン酸化によってシナプス可塑性が変化する初めての例であり、当該分野の発展につながる成果と言える。3. CAST/ELKS遺伝子改変マウスの解析:CAST/ELKSの小脳におけるダブルノックアウトマウスの解析を進めた。特に、シナプスの微細構造について、トモグラフィー電顕を用いて、詳細なデータ取得を行う目的で、オーストリアの重本博士の研究室に、当教室の萩原講師を派遣し、実際のサンプル調製、データ習得を行った。現在、データの解析中である。また、網膜特異的なCAST/ELKSノックアウトでは、Creリコンビナーゼを持ったアデノ随伴ウイルスを生後間もないマウスの網膜にマイクロインジェクションする実験系の立ち上げを行った。
2: おおむね順調に進展している
CAST結合蛋白質については、同定まで至っていないが、培養細胞を用いた実験系も立ち上がっている。なお、遺伝子改変マウスの解析やリン酸化マウスの解析データに時間を取られることが多くなり、上記の結合蛋白質についてはスピードと規模も多少抑えた形で進めていきたい。リン酸化部位変異マウスの作出に関しては、CAST/ELKSともにヘテロマウスの作出が終了し、交配・繁殖を開始したところであり、28年度中にはマウスの個体レベルで、リン酸化の意義について解析に着手できる予定である。
28年度以降は、引き続きCAST/ELKS遺伝子改変マウスの解析を継続して進める。特に、小脳および海馬については、電気生理学的なデータおよび形態学的なデータを揃えて、論文投稿を目指す。また、扁桃体をふくめて子育てや恐怖の記憶形成に関わる神経回路のプレシナプス性の制御機構を明らかにする目的で、in situハイブリダイゼーションを用いて、プレシナプス性機能分子の発現解析を網羅的に進める。
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PNAS
巻: - ページ: -
10.1073/pnas.1514074113
J. Neurochem.
巻: 136 ページ: 36-47
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http://www.med.yamanashi.ac.jp/basic/bioche01/index.html