研究課題
(1) ミクログリアの病的活性化の分子病理に関する研究27年度には筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態モデルであるSOD1G93Aマウスで、ニューロン・ミクログリア相関に与るミクログリア受容体等の遺伝子発現、細胞内情報伝達系の活性化等を網羅的に検討した結果、ALS病態下でミクログリアの性状転化が生じ、神経細胞毒性に与るTNFα、IL1β、IL6等の産生の増加と神経保護に働くIGF1、BDNF等の産生の低減を来していることを見出し、その性状転化にCX3CR1、CD200R等のミクログリア細胞膜上の受容体が機能していることを確認した。28年度では、CD200Rを活性化する低分子化合物を、医薬候補低分子化合物ライブラリーよりスクリーニングし、その賦活がミクログリアの活性化を阻害するとともに、神経症状を緩和することを見出した。そして、poly I:Cによる統合失調症病態モデルマウスにて、プレパルス抑制障害を来す以前の7週齢に、探索したCD200R賦活薬を投与した結果、10週齢における脳内ミクログリア活性化及びプレパルス抑制障害の低減を確認した。(2) ニューロン・ミクログリア相関を治療標的とする統合失調症予防創薬に掛かる研究27年度には、fractalkine(FKN)のプロセシングによる可溶性FKNの産生が、ITAM-Syk系を刺激しミクログリアの病的賦活を誘引することを生化学的解析により見出した。また、可溶性FKNの産生をMRIにより画像化することをねらい可溶性FKNの産生を蛍光画像法で可視化する機能プローブを創製した。28年度では当該プローブを改変しparamagnetic effectによりMRI信号を生起するMRI機能プローブを創製し、それをpoly I:Cによる統合失調症病態モデルマウス8週齢から調製した脳切片培養系に適用することでNMR信号を検出した。
2: おおむね順調に進展している
28年度までに当初の計画に従い、統合失調症病態脳における炎症性のミクログリア活性化を阻害するCD200R賦活薬を探索し、その病態改善に及ぼす効果をpoly I:Cによる統合失調症病態モデルマウスにて確認することができた。また、統合失調症病態脳におけるフラクタルカイン(FKN)のプロセッシングからの可溶性FKNの産生を、リアルタイムでMRIにより描出するためのparamagnetic effectの原理によるMRI機能プローブを創製し、その機能評価を統合失調症病態モデルマウスより調製した脳切片培養系にてIn-cell NMR法を用い行うことに成功した。以上の点から、本研究は順調に進展していると考えられる。
29年度も、28年度に引き続き、CD200R、FKNを治療標的とする統合失調症発症予防薬の創製を目指すとともに、統合失調症病態脳における分子異常動態をMRIによりリアルタイムで解析するためのMRI機能プローブの合成並びに機能評価に当たることで、今後の統合失調症患者の超早期診断に有用なMRIの技術基盤を構築する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件)
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