研究実績の概要 |
本研究では、これまでに統合失調症患者で発症初期からミクログリアの活性化がPETイメージングにより観察されたことを受け、活性化ミクログリアの病的な賦活の分子原理の探究と、その活性化に働くプロテアーゼ様酵素の脳内動態をin vivoで画像化するためのMRI技術を創出することによるミクログリアの病的賦活の阻害剤の探索を行うことをねらいとした。即ち、ここでは、ミクログリアの活性化に伴い、その細胞膜上でfractalkine(FKN) がADAM10により切断されることに着目し、FKNのプロセシングをMRIで描出するとともに、当該細胞にてミクログ リアの病的な活性化に働く疾患関連タンパク質を探索することを達成目標とする。 29年度では、病態モデル動物を用いて、遅発性ミクログリア活性化の予防薬の創製を行った。統合失調症ではミク ログリア活性化を抑制するFKN-CX3CR1情報伝達系、CD200-CD200R情報伝達系の機能障害が示唆されるため、CX3CR1やCD200Rに対するアゴニストには神経炎症抑制効果が期待される。よって本研究では、FKNとCD200の受容体結合部位の配列を基にペプチドを合成し、これが予防薬としての効果を持つかどうかを検証した。当該ペプチドには 、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVG)を結合することにより、血液脳関門透過性を持たせた(Kumarら, Nature, 2 007)。また、安定同位体標識したCX3CR1及びCD200Rに結合するアゴニスト低分子化合物を、既に申請者らが構築済の膜受容体結合低分子化合物ライブラリーから個体NMRにより探索した。そして、それら受容体アゴニストの生理活性を、LPSで活性化を誘導した初代培養ミクログリアで解析した。
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