研究課題
多くの精神神経疾患には認知行動障害が基礎症状として存在するが、その神経基盤は解明されていない。これまでに可逆的神経伝達阻止法などの新規に開発した神経回路制御法を用いて、報酬・忌避に基づく意思決定行動や薬物依存症などの精神障害の病態に関与する大脳基底核神経回路機構を同定してきた。そこで本研究においては、精神神経疾患の認知行動障害の神経基盤は神経回路制御異常であるとの仮説のもと、精神神経疾患モデルマウスの認知行動障害を分類し、その認知行動の神経回路制御機構を同定することで、認知行動障害の背景にある神経回路制御異常を明らかにすることを目的にしている。これにより、精神神経疾患の病態を神経回路という新しい視点から解明することで、精神神経疾患の治療法開発につなげることを目指している。精神疾患モデルマウスとして変異型DISC1トランスジェニックマウスに対して、場所選好試験を行ったところ、報酬学習に障害を認めた。そこで、場所記憶を司る海馬CA1の場所細胞の神経活動記録を行ったところ、場所細胞の特性については変異型DISC1トランスジェニックマウスで変化は無かったが、場所選好試験中において報酬と関連づけたゴールにおいて野生型マウスで観察される報酬関連活動が、変異型DISC1トランスジェニックマウスでは消失していることを見いだした。このことは報酬学習に関連する神経回路の異常を示唆しており、今後の大脳基底核神経回路異常の探索につなげていく。
3: やや遅れている
精神神経疾患モデルマウスにおいて報酬学習の低下と、関連する海馬場所細胞の神経活動の変化を見いだした。一方、忌避行動を観察するための装置の故障により、研究費の一部を繰越し、翌年度にかけて研究を行った。ひきつづき、精神神経疾患モデルマウスの報酬・忌避活動の観察を続ける。
精神神経疾患モデルマウスの認知行動障害を解析することによって、精神神経疾患に特異的な大脳基底核神経回路異常を同定する。特にタッチスクリーン認知学習装置を用いた認知行動課題を設定する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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