研究実績の概要 |
多くの精神神経疾患には認知行動障害が基礎症状として存在するが、その神経基盤は解明されていない。これまでに可逆的神経伝達阻止法などの新規に開発した神経回路制御法を用いて、報酬・忌避に基づく意思決定行動や薬物依存症などの精神障害の病態に関与する大脳基底核神経回路機構を同定してきた。そこで本研究においては、精神神経疾患の認知行動障害の神経基盤は神経回路制御異常であるとの仮説のもと、精神神経疾患モデルマウスの認知行動障害を分類し、その認知行動の神経回路制御機構を同定することで、認知行動障害の背景にある神経回路制御異常を解明することを目的にしている。これにより、精神神経疾患の病態を神経回路という新しい視点から解明することで、精神神経疾患の治療法開発につなげることを目指している。 大脳基底核神経回路の直接路と間接路にそれぞれ特異的な可逆的神経伝達阻止法を用いて、インテリケージ内での集団飼育下における場所識別課題と連続逆転課題において、行動柔軟性に間接路が重要であることを示した(Macpherson et al., Learn Mem, 2016)。さらにD2L受容体ノックアウトマウスを用いて、その行動柔軟性がドーパミンとD2L受容体シグナルにより制御されていることを示した。D2L受容体はタッチスクリーン認知学習装置を用いた図形識別課題と逆転課題に必須である事も示した(Morita et al., Mol Neuropsychiatry)。これらの結果から、認知行動における神経回路制御機構を明らかにした。
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