研究実績の概要 |
脳内の興奮性シナプス伝達の大部分を担うAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)は、神経活動依存的にシナプス後膜(PSD)に動的に移動することから、脳の可塑的性質(シナプス可塑性)の根幹をなすと考えられている。PSD-95はAMPA受容体をPSDにアンカリング(捕捉)する主要な足場蛋白質であることから、PSDにおけるPSD-95の数や機能を時・空間的に制御する分子機構は、まさにシナプス可塑性の動作原理となりうると期待される。本研究では、申請者らが独自に発見してきたAMPA受容体制御分子に着目して、PSDにおけるAMPA受容体の捕捉制御機構を明らかにすることを目指す。今年度は、1)PSD-95のシナプス後膜における数を調節する新しい酵素群(脱パルミトイル化酵素ABHD17A、17B、17C)を報告した(Yokoi, Fukata Y et al, J Neurosci 2016)。具体的には、ABHD17酵素は、PSD-95やAMPA受容体のシナプス局在とスパイン密度を制御することを見出した。さらに、それらの遺伝子改変マウスを作成して、生理機能の解明に着手した。また、2)PSD-95のscaffolding活性を制御するLGI1-ADAM22リガンド-受容体の機能解析のために、各種変異マウスを作成、解析し、興味深い表現型を得ている。新たなシナプス制御機構とその破綻による病態機構を明らかにできるものと考えられる。
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