研究課題
脳内の速い興奮性シナプス伝達の大部分は、AMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)によって担われている。したがって、神経活動依存的なAMPA受容体のシナプス後膜(PSD)への動的移動は、脳の可塑的性質の根幹をなすと考えられる。PSD-95はAMPA受容体をPSDにアンカリング(捕捉)する主要な足場蛋白質であることから、PSDにおけるPSD-95の数や機能を時・空間的に制御する分子機構は、まさにシナプス可塑性の動作原理となりうると期待される。本研究では、申請者らが独自に発見してきたAMPA受容体制御分子群に着目して、PSDにおけるAMPA受容体の捕捉制御機構を明らかにすることを目的とした。これまでに、私共はPSD-95の主要な結合タンパク質として同定していた“てんかん関連リガンド・受容体、LGI1-ADAM22複合体”がPSD-95との直接結合を介して、AMPA受容体を正に制御することを見出してきた。しかし、LGI1-ADAM22リガンド・受容体の存在様式、結合様式は不明であった。平成29年度は、東京大学、深井周也博士との共同研究により、LGI1-ADAM22複合体のX線結晶構造解析を行った(Yamagata, Miyazaki et al., Nat Commun in press)。LGI1-ADAM22リガンド・受容体(ヘテロ2量体)は、別のLGI1-ADAM22ヘテロ2量体と結合しヘテロ4量体を形成することが明らかになった。ここで生じるLGI1-LGI1間の結合は、LGI1の異なるドメイン間でおこるユニークなものであった。さらに、ヒトてんかん家系で報告されているLGI1変異の中に、このLGI1-LGI1間結合を阻害する変異を見出し、この変異を導入した変異マウスがてんかん表現型を示すことを明らかにした。これらの知見は、LGI1-ADAM22リガンド・受容体が脳機能に必須な経シナプス連結装置を形成することを示唆しており、LGI1-ADAM22によるAMPA受容体制御機構を理解する上で極めて重要な結果である。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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