研究課題/領域番号 |
15H04282
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
金井 正美 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 教授 (70321883)
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研究分担者 |
平手 良和 東京医科歯科大学, 実験動物センター, 講師 (70342839)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 着床 / マウス / Sox17 |
研究実績の概要 |
女性の社会進出に伴う出産高齢化、少子化現象は深刻な社会問題である。既婚カップルの10-25%が不妊に悩み、その40%は母体が要因であると考えられている。受精胚の遺伝的要因に寄らない母体の環境因子は複雑であり、受精胚の母体着床プロセスに至っては系統だった基礎的研究は殆どなされていないのが現状である。本申請では母体サイドに原因がある着床不全ヘテロ不全のマウス(3種類のSox17変異マウスのヘテロ個体)を用いて、受精胚の母体への着床プロセスを病態学的に解析することで、その分子制御を明らかにし不妊治療への一歩を踏み出すことを目的にしている。本年度は、Sox17 ヘテロ個体とワイルド個体から得た子宮内膜上皮のRNAを用いて、マイクロアレイ解析を実施し、ワイルド個体と比較してシグナル比が有意に偏っている遺伝子群で発現量に2倍以上減少変化が認められた遺伝子 (Sox17下流遺伝子候補) に対し、qPCR法により、Sox17 heteroとwild type間での発現量の差異を定量化した。発現パターンからSox17と同調する直接の下位遺伝子候補を絞り込んだ。ヒトで子宮内膜上皮での発現が確認されており、発現量によりIVF効率の差異が報告されているSox17遺伝子について、我々が得た病態学的解析で得られた着床不全に対して、その分子制御の一部を明らかした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス着床のタイミングは妊娠4日 (DOP4) である。そこで、DOP1, 3, 4の子宮内膜上皮からtotal RNAをそれぞれ精製し、増幅、合成を行いbiotin標識したcRNAプローブを作製した。その後、各々のサンプルをアフィメトリック社のMouse Expression Set 430上でハイブリダイズさせ、アレイ解析を実施した。得られたデーから、dChiPによりcPCA解析し、データの正誤性を確認し、DOP3 ワイルド個体とDOP4 ヘテロ個体データが近似値を示すことから、ヘテロ個体の子宮内膜上皮における着床のタイミングの遅延が示唆された。またヘテロ個体で優位に低下した遺伝子の発現から3パターンが得られた。そのうち、Sox17の発現パターンと同調する下位遺伝子候補数遺伝子を絞り込んだ。今後、候補遺伝子の発現解析や、その上流解析を生化学的に実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
Sox17ワイルド個体と比較し、シグナル比が有意に偏っている遺伝子群の中で、発現量に2倍以上の変化が認められた遺伝子 (Sox17下流遺伝子候補) に対し、qPCR法により、Sox17 +/- とwild type間での発現量の差異を、さらに詳細に時系列で定量化し、着床タイミングを明らかにする。有意に発現量の変化が認められた遺伝子群に対しては、妊娠後に経時的にサンプリングした横断切片を用いてin situ hybridization、もしくは、免疫組織科学を実施し、Sox17とoverlapかつ類似した発現パターンを示す遺伝子群を標的遺伝子候補として最終的に選別する。以上から得られたデータから、Sox17下流に想定された遺伝子群については、CRISPR-Cas9系によるノックアウト個体作成のためにvectorデザインを開始する。一方、In vitro着床モデルに関しては引き続き培養系の開発を継続すると共に、細胞置換など別実験の可能性も模索する。
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