研究課題
薬物代謝関連遺伝子をヒトと実験動物で置き換えたヒト化動物は、ヒト特異的な薬物代謝や安全性を予測する上で大きな役割を果たすと考えられる。本研究では医薬品開発のスピードアップと成功確率の向上を目指して、実験動物の中でも経時採血が可能、毒性試験等の背景データが豊富なラットを用いてヒト化動物を作製し、評価を行った。本年度は以下の2系統の遺伝子破壊ラットの機能解析を行った。1)昨年度までに作製したPxr破壊ラットを繁殖させ、以下の実験に使用した。Pxr破壊ラットおよび正常ラットにCyp3aの誘導剤であるPCNあるいは溶媒であるcorn oilを4日間投与し、肝臓を摘出した。次に肝臓からRNAを抽出し、cDNA合成を行い、Cyp3a特異的なプライマーによりRT-PCRを行った。正常ラットにおいてはCyp3aの発現量がcorn oil に比べてPCNで上昇していたのに対し、Pxr破壊ラットにおいてはCyp3aの発現量がcorn oil とPCNで同等であった。このことから、Pxr遺伝子破壊により、リガンド応答性を消失していることが示唆された。すなわち、Pxr破壊ラットにおいて、ラットPxr遺伝子が機能的に破壊されていることが示された。2)昨年度までに作製したMdr1破壊ラットを繁殖させ、以下の実験に使用した。正常ラットと作成したMdr1破壊ラットにキニジンを尾静脈投与し、1時間後の血漿中濃度と脳組織内濃度を測定した。その結果、血漿中濃度に対する脳内濃度の比(B/P比)は、正常ラットに対してMdr1破壊ラットでは13倍高値であった。このことより、Mdr1遺伝子破壊により、基質であるキニジンの脳内移行抑制作用が低下し、脳内移行が亢進したことが示唆された。すなわち、Mdr1破壊ラットにおいて、ラットMdr1遺伝子が機能的に破壊されていることが示された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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Experimental Cell Research
巻: 390 ページ: 111914~111914
doi: 10.1016/j.yexcr.2020.111914