研究課題/領域番号 |
15H04291
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
吉川 欣亮 公益財団法人東京都医学総合研究所, ゲノム医科学研究分野, プロジェクトリーダー (20280787)
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研究分担者 |
高田 豊行 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (20356257)
設楽 浩志 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 主任基盤技術研究職員 (90321885)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 実験動物学 / 難聴 / 遺伝子発現 / ゲノム編集 / コンソミックマウス / カドヘリン23 |
研究実績の概要 |
順遺伝学的手法は難聴発症原因遺伝子の同定のための主要なアプローチであり、多くの遺伝子変異を同定に貢献してきたが、多因子性(QTL)の難聴発症原因の同定はいまだ困難な状況にある。そこで本研究はゲノム編集、精密な遺伝子発現量計測を導入した順遺伝学的手法の技術革新によって多因子性難聴の原因を解明すること、および聴力を正常化したマウス系統の樹立による新たなバイオリソース構築することを目的に、本年度は以下の解析を実施した。 1.Cdh23-ahl編集系統個体群を用いたQTLマッピング 本年度はC57BL/6J(B6)の1対のMSM/Ms(MSM)染色体を置換したコンソミック系統のうち、特に12番染色体の一部を置換した(サブ)コンソミック、B6J-Chr12C@MSMの遺伝解析を実施した。第1に、本研究ではB6J-Chr12C@MSMとB6Jを交配し、F2個体を作製し、連鎖解析を実施した。その結果、セントロメア領域に統計学的に有意なQTLを検出した。しかしながら、予想したようにQTL解析の結果においてノイズが検出され、現在B6Jの主要な難聴原因遺伝子変異であるカドヘリン23 (Cdh23) のahl変異(Cdh23-753A)(Kikkawa & Miyasaka, 2016)をCdh23-753Gへゲノム編集により置換したノックインB6マウス(Miyasaka et al., in press)との交配によるF2個体の聴力表現型データを蓄積している。一方、遺伝解析の過程でF2個体の聴力には雌雄差が存在し、雌個体が有意に聴力低下を示すことが明らかとなった。 2.ゲノム編集によるLrrc30ノックインマウスの作製 B6Jマウスの難聴発症への関与が予想されるLrrc30の遺伝子発現領域に存在する遺伝子多型のノックインゲノム編集を試みた。しかし、現時点で目的の多型を置換した個体は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はコンソミック系統に基づく遺伝解析によって、B6Jマウスの難聴抑制効果をもつQTLの候補を同定した。実施予定だったCdh23-753Gゲノム編集個体との交配系の解析結果が出るまでには至らなかったが、この結果は新たな難聴遺伝子の同定のための重要な情報となると思われた。しかし、ノックインゲノム編集が現時点でうまくいっておらず、予定していたLrrc30ゲノム編集個体はいまだ得られていない。一方、本年度は (B6J × MSM) F1および (MSM × B6J) F1の雌雄個体の内耳蝸牛のRNA-Seq遺伝子発現解析を実施し、予定を上回り早期にデータを得ることができた。 また、本年度は本研究に関連するCdh23-ahl多型のゲノム編集による成果(Miyasaka et al., Hum Mol Genet, in press)、および多因子性遺伝性難聴の知見(Kikkawa & Miyasaka, Monogr Hum Genet, 2016)をそれぞれ原著論文および総説論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究計画に基づき、以下の項目について研究を実施する。 1.本年度に引き続き、次年度もB6J-Chr12C@MSMの遺伝解析を実施し新たな難聴発症関連遺伝子の同定を目指す。 2.本年度に引き続き、次年度もLrrc30ゲノム編集を継続する。加えて次年度はDBA/2JおよびNOD/ShiマウスのCdh23-ahl多型のゲノム編集を実施する。 3.本年度実施した遺伝子発現データを精査し、B6J-MSM間および両者の雌雄間の発現変動アレルを同定する。また、同定した遺伝子の内耳蝸牛における局在を調査する。
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