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2016 年度 実績報告書

脱ユビキチン化酵素USP8の機能獲得型変異によるクッシング病の発症機構

研究課題

研究課題/領域番号 15H04293
研究機関東京工業大学

研究代表者

駒田 雅之  東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (10225568)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードユビキチン / 脱ユビキチン化酵素 / エンドサイトーシス / 受容体ダウンレギュレーション / 腫瘍 / クッシング病 / 脳下垂体 / ACTH
研究実績の概要

Cushing病は、脳下垂体のACTH産生細胞の腫瘍からACTHが過剰分泌されることで、肥満、糖尿病、高血圧、筋力低下など様々な症状をきたす内分泌性疾患である。しかしCushing病の病態にはまだよくわかっていない部分が多く、その理由の1つとして、これまでCushing病の優れた動物モデルが存在しなかったことが挙げられる。そこで本研究ではCushing病の動物モデルの確立をめざし、脳下垂体のACTH産生細胞に特異的にヒトCushing病腫瘍に見られる変異USP8を発現するトランスジェニック・マウスの作出を試みている。
脳下垂体のACTH産生細胞に特異的に発現するプロオピオメラノコルチン遺伝子のプロモーターの下流に変異USP8をつないだDNAをもつトランスジェニック・マウスを作出し、脳下垂体において変異USP8タンパク質を発現する系統を得た。その系統のマウスの飼育を継続しているが(最高齢で~12ヶ月齢)、今のところまだCushing病に見られる症状は観察されていない。そこで、この系統のマウスの飼育を継続して表現型の解析を続けるとともに、このシステムでは変異USP8の発現が弱くCushing病症状に至らない可能性を考え、より強い普遍的プロモーターの下流で変異USP8を発現させるトランスジェニック・マウスの作出にも着手している。
その一方で、USP8変異をもつCushing病のモデル細胞を作出するため、CRISPR-Cas9システムを用いてヒトCushing病におけるUSP8変異を模倣するような欠失変異をもつマウスACTH産生細胞株AtT-20の樹立も推進している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヒトCushing病腫瘍に見られる変異USP8を発現するトランスジェニック・マウスの作出に関しては、最初に試みた方法では脳下垂体ライセートを用いたイムノブロッティングで変異USP8の発現を検出することはできたものの、そのようなマウスにおいて現在までヒトCushing病に見られるような症状は観察されていない。しかし、脳下垂体特異的に遺伝子発現を誘導する既知のエンハンサーの種類は限定されており、変異USP8の発現量がCushing病をひき起こすに十分なレベルに到達していない可能性は当初から想定されていた。そのために、現在すでにより強力な普遍的CAGエンハンサーとCre-loxPシステムを用いたトランスジェニック・マウスの作出に着手しており、その進捗はおおむね順調ではないかと判断している。
また新たに、CRISPR-Cas9法を用いてACTHを産生・分泌するマウス脳下垂体細胞株AtT-20にヒトCushing病腫瘍に見られるUSP8変異を導入した変異細胞株の作出を試みており、現在、期待する変異をもつAtT-20細胞株のクローニングを行っている段階である。これまで遺伝子導入効率が非常に低いという理由からAtT-20細胞における変異USP8の解析が困難であったため、この細胞株が樹立されれば、USP8変異によるCushing病の優れたモデル細胞になると期待され、こちらも順調に進展している。

今後の研究の推進方策

Cushing病患者で見出された変異USP8をコンディショナルに発現するトランスジェニック・マウスを作出し、これまで存在しなかったCushing病の動物モデルを樹立する。まず、普遍的CAGプロモーターと変異USP8 cDNAの間にlox P配列ではさんだスタッファー配列を挿入したコンストラクトをもつトランスジェニック・マウスを作出する。このマウスをPOMC-Creマウス(Jackson Laboratoryより入手可能)と交配して脳下垂体特異的にCreリコンビナーゼを発現させ、脳下垂体のACTH産生細胞だけでスタッファー配列を除去して変異USP8を発現誘導するシステムを構築する。そして、このトランスジェニック・マウスの脳下垂体における変異USP8タンパク質の発現と腫瘍形成、そして血中のACTHやコルチゾールの濃度上昇、肥満、糖尿病などのCushing病症状を解析する。
USP8変異によるCushing病発症の分子機構の詳細を解明するためには、USP8変異体を発現するACTH産生細胞株を用いた解析が不可欠である。そこで、CRISPR-Cas9システムを用い、Cushing病におけるUSP8の活性化変異を模倣すると期待される14-3-3タンパク質結合モチーフの欠失変異を有するAtT-20細胞株を樹立する。そしてその細胞においてCushing病における変異USP8の性状(14-3-3タンパク質結合性、分子内切断、酵素活性の上昇、核局在など)が再現されているか検討し、確認された場合にはこのAtT-20細胞株を用いて細胞膜タンパク質や核タンパク質のユビキチン化や発現のレベル、およびACTH前駆体タンパク質POMCの遺伝子発現レベルを正常AtT-20細胞と比較することで、USP8変異によるCushing病発症の分子機構に迫る。

  • 研究成果

    (24件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (5件)

  • [国際共同研究] Medizinische Klinik und Poliklinik IV(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      Medizinische Klinik und Poliklinik IV
  • [国際共同研究] National Institute of Health(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      National Institute of Health
  • [国際共同研究] McGill University(カナダ)

    • 国名
      カナダ
    • 外国機関名
      McGill University
  • [国際共同研究] University of Rome Tor Vergata(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Rome Tor Vergata
  • [国際共同研究] The University of Melbourne(オーストラリア)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      The University of Melbourne
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] USP15 attenuates IGF-I signaling by antagonizing Nedd4-induced IRS-2 ubiquitination2017

    • 著者名/発表者名
      Fukushima T, Yoshihara H, Furuta H, Hakuno, F, Iemura S-I, Natsume T, Nakatsu Y, Kamata H, Asano T, Komada M, Takahashi S
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 484 ページ: 522-528

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2017.01.101

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Tandem UIMs confer Lys48 ubiquitin chain substrate preference to deubiquitinase USP252017

    • 著者名/発表者名
      Kawaguchi K, Uo K, Tanaka T, Komada M
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 7 ページ: 45037

    • DOI

      10.1038/srep45037

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Deficiency of X-linked protein kinase Nrk during pregnancy triggers breast tumor in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Yanagawa T, Denda K, Inatani T, Fukushima T, Tanaka T, Kumaki N, Inagaki Y, Komada M
    • 雑誌名

      Am. J. Pathol.

      巻: 186 ページ: 2751-2760

    • DOI

      10.1016/j.ajpath.2016.06.005

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] クッシング病において脱ユビキチン化酵素USP8変異体を活性化するプロテアーゼの解析2017

    • 著者名/発表者名
      浅水謙吾、川口紘平、遠藤彬則、福嶋俊明、金丸周司、駒田雅之
    • 学会等名
      第28回 間脳・下垂体・副腎系研究会
    • 発表場所
      ロシュ・ダイアグノスティックス 本社ビル(東京都港区)
    • 年月日
      2017-03-11 – 2017-03-11
  • [学会発表] 遺伝子変異による脱ユビキチン化酵素USP8の細胞質から核への局在変化とCushing病2016

    • 著者名/発表者名
      駒田雅之
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
    • 招待講演
  • [学会発表] 母性Cyclin E-DNMT1新規複合体によるツメガエル尾部形成のエピジェネティックな制御2016

    • 著者名/発表者名
      田中利明、駒田雅之
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] クッシング病で見られる脱ユビキチン化酵素USP8の変異はバソプレシン受容体V1bの安定化を引き起こす2016

    • 著者名/発表者名
      福嶋俊明、川口紘平、遠藤彬則、駒田雅之
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素USP28はSnailを安定化し、がん細胞の浸潤に寄与する2016

    • 著者名/発表者名
      佐藤晃一、井上靖道、伊藤友香、駒田雅之、林秀敏
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] Deubiquitinase USP5 is required for the disassembly of heat-induced stress granules2016

    • 著者名/発表者名
      Xuan Xie, Shunsuke Matsumoto, Masayuki Komada
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素USP25のユビキチン結合モチーフはK48ユビキチン鎖に対する切断特異性を規定する2016

    • 著者名/発表者名
      川口紘平、卯尾和音、田中利明、駒田雅之
    • 学会等名
      第39回 日本分子生物学会大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] Cushing病におけるUSP8インタラクトーム解析2016

    • 著者名/発表者名
      駒田雅之
    • 学会等名
      第43回 日本神経内分泌学会学術集会
    • 発表場所
      アクトシティ浜松コングレスセンター(静岡県浜松市)
    • 年月日
      2016-10-14 – 2016-10-15
    • 招待講演
  • [学会発表] USP8 interactome in Cushing’s disease2016

    • 著者名/発表者名
      Masayuki Komada
    • 学会等名
      IMPROCUSH-2 (Improving Outcome of Cushing’s Syndrome Symposium 2)
    • 発表場所
      Carl Friedrich von Siemens Stiftung (Munich, Germany)
    • 年月日
      2016-06-23 – 2016-06-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Encyclopedia of Signaling Molecules, 2nd Edition2017

    • 著者名/発表者名
      Komada M, Reincke M, Theodoropoulou M
    • 総ページ数
      4700
    • 出版者
      Springer
  • [備考] 駒田研究室 ホームページ

    • URL

      http://www.komada-lab.bio.titech.ac.jp

  • [備考] 細胞制御工学研究センター ホームページ

    • URL

      http://www.rcb.iir.titech.ac.jp

  • [備考] 科学技術創成研究院 ホームページ

    • URL

      http://www.iir.titech.ac.jp

  • [備考] 生命理工学院 ホームページ

    • URL

      http://www.educ.titech.ac.jp/bio/

  • [備考] 東京工業大学 ホームページ

    • URL

      http://www.titech.ac.jp

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-09-26  

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