研究課題/領域番号 |
15H04300
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
山田 源 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 教授 (80174712)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / アンドロゲン / エンハンサー / アンドロゲンレセプター / 発現制御 / 雄性化 / ホルモン |
研究実績の概要 |
アンドロゲンとWntを含むシグナルが、下流制御因子を介して前立腺癌と胎児生殖器の性質を制御するか統合的に解析した。男性ホルモン応答性遺伝子のエンハンサーにおけるクロストークについて解析し、前立腺癌細胞等の応答に如何に集約されるか解明した。 これまでに男性ホルモン応答性の新規標的遺伝子MafBの3'UTR領域に二箇所のアンドロゲンレセプター(AR)結合部位AREが存在することが判明した。また、同じbZipファミリーに属するATF遺伝子においてはその変異が尿道下裂を呈する事が判明しつつある。 近年、前立腺癌近傍の間葉細胞(CAF)と外生殖器におけるMafB陽性間葉において一種の類似性がある事が判明しつつある。癌繊維芽細胞(CAF)においてはATFが主要なアンドロゲン標的因子であることも最近示された。 間葉細胞としての類似性が、胎児外生殖器及び、前立腺癌近傍の間葉細胞(CAF)において、bZipファミリーの発現を介するという意味で、今後興味深いと思われる。 ATF3は、MafBと異なり、尿道近傍間葉に特異的な発現は検出されなかった。しかし、他のbZipファミリー遺伝子群においてMafBと重なり発現する因子が見出されつつある(未発表)。MafBを含むbZipファミリー遺伝子は相互作用する事によりダイマーを形成し、その相互作用が種々のシグナル伝達系の制御下にある事が細胞株を用いた実験系で示唆されてきた。しかしながら、生殖器官形成を含む個体レベルでの知見は極めて乏しい状況であった。MafB遺伝子の同定に続き複数のbZip遺伝子の関与が推察される。 更にbZipファミリーは上流の信号添付によりリン酸化を含めた修飾が必要であることが知られている。このような知見を受けてアンドロゲンシグナルの添付によりMafB及び他の因子におけるリン酸化等の修飾について検討の必要性がクローズアップされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際論文として有意な出版を行っている。現在投稿準備中2報に加え、Clinical Genetics(IF3.8) In Press、Sexual Development(In Press)等複数を含む論文を出版した。 また我々の研究が注目され、オーストラリアで本来8月に開催されるReproduction Down 2017及び中国にて7月開催される25th International Symposia on Morphological Sciences (ISMS)において国際シンポジウム講演を行う。 更に、投稿中の論文を含め、現在順調に研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
アンドロゲンとWntを含むシグナルが、下流制御因子を介して前立腺癌と胎児生殖器の性質を制御するか統合的に解析する。男性ホルモン応答性遺伝子のエンハンサーにおけるクロストークについて解析し、前立腺癌細胞等の応答に如何に集約されるか解明する。 MaB遺伝子アンドロゲン応答性の発現制御について、我々が見出しつつある遠位エンハンサー及び3'UTRとの協調した発現制御メカニズムについて解明する。その為に外生殖器由来のオルガンカルチャー系を立ち上げる。 レポーター DNAを我々が開発したソノポレーション法によって遺伝子導入し、その発現制御を解明する。この実験系は、我々独自の系である。 このような転写因子の制御下に間葉細胞の形態をコントロールするMMP、プロテアーゼ群が存在するかについて解析する。 前立腺癌及び胎児外生殖器において重要であるDHT(ジヒドロテステステロン)について質量分析MSを含めた局所組織における正確なレベルの測定、そのリガンドの可視化についても試みる。
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