研究課題/領域番号 |
15H04303
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
大屋敷 一馬 東京医科大学, 医学部, 教授 (20201387)
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研究分担者 |
大屋敷 純子 東京医科大学, 医学部, 教授 (20191950)
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 講師 (40385547)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エクソソーム / 骨髄異形成症候群 / miRNA / 骨髄間質細胞 |
研究実績の概要 |
初年度であるH27年度では実験計画に従い、造血器腫瘍における骨髄間質細胞と腫瘍細胞あるいは造血細胞におけるエクソソームを介した細胞間コミュニケーションの検討を行うことを目的として、骨髄異形成症候群(MDS)患者の骨髄間質細胞の樹立を試みた。すなわち、白血病などの細胞成分が採血などで容易に得られる造血器腫瘍ではエクソソームを用いる検討よりも、直接的に腫瘍細胞の解析が重要であるが、幼若な細胞の頻度が少ないMDSではエクソソームが病勢に及ぼす可能性が大きいと考え、MDSを対象疾患として絞った。はじめに、MDS低リスク群(5例)、高リスク群(6例)、白血病化例のMDS(4例)患者より文書にて同意を得て、骨髄間質細胞を樹立した(IRB承認番号2648)。これらの患者由来の骨髄間質細胞とLONZA社より購入した健常人骨髄間質細胞(若年者および高齢者由来)を用い、TaqMan PCRアレイにて網羅的解析し、高リスク群に特徴的なexosomal miRNA群を抽出した。さらに、バイオインフォマティクス手法としてMirTarBaseで標的遺伝子を絞り込み、The Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery(DAVID)で想定されるシグナル伝達経路を検討した。 その結果、MDSの病型進展に伴い変化する骨髄間質細胞由来エクソソームmiR-Xを同定した。miR-XはmiRTarBaseでの解析ではToll-like receptorに関する遺伝子を標的とし、DAVIDによるpredictive pathway 解析では IL-6を抑制する因子として作用している可能性も示唆された。MDSの骨髄間質細胞は固形腫瘍におけるCAF(cancer-associated fibroblast)と同じような位置づけと考えられ、miR-Xのバイオマーカーとしての有用性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、エクソソームの量的・質的変化に基づく細胞間コミュニケーション機構を解明すると同時に、純化したエクソソームより疾患関連miRNAを 次世代シーケンスシステムを用いて同定し、エクソソーム解析系を構築することを目指している。そして、造血器腫瘍における病勢診断や治療法確定のための新規診断法を確立する。初年度では、造血器腫瘍において骨髄内で腫瘍細胞の発育・進展に重要な役割を担っていると考えられる骨髄間質細胞から分泌されるエクソソームの疾患特異的miRNAを同定することを目指し、研究協力者と連携してMDS患者由来骨髄間質細胞ライブラリーを作成した(現在も引き続き検体を追加中)。研究計画ではこれらの疾患関連骨髄間質細胞が分泌するエクソソームを回収し、未知のmiRNAは次世代シーケンサーシステムを用いて探索する予定としていたが、現有設備の次世代シーケンスシステム(イルミナ社)におけるRNAシーケンシング解析のアプリケーション面でのサポートが現時点でも不十分なため、TaqMan PCRアレイを用いた既知miRNAの半網羅的解析を行った。TaqMan PCRアレイによる解析は当研究室でもこれまでに数多くの成果を上げている手法であり、データ抽出からの候補miRNAのターゲット抽出、pathway解析のフローが確立されており、研究計画の初年度内でのmiR-X同定が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、exosomal miRNA解析により抽出されたmiR-Xが血清診断としても可能であるかを検証する目的で、患者血清由来のexosomal miRNAにおける発現の相同性を検証する。その後、当該miRNAが血清診断としても有用であることを用いて、validation cohortで個別PCRを行い、様々なリスク(国際予後スコアリングシステムおよびrevise version)での患者を検証する。 さらに、MDS細胞と患者由来の骨髄間質細胞の次世代シーケンスシステムを用いたexome解析により、加齢による遺伝的変化およびexosomal miRNA発現の違いを検証する。また、実験系としてエクソソームを放出する骨髄間質細胞をドナー細胞、MDS由来CD34陽性細胞をレシピエント細胞と設定し、in vitro 系でのエクソソームを介する細胞間コミュニケーション機構がMDSの病型進展に及ぼす影響を検証する。
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