研究実績の概要 |
本研究の目的は、高DNAメチル化型大腸癌の抗EGFR抗体薬治療耐性の分子機構を明らかにして、この治療抵抗性を克服するための方策を探索することにある。平成29年度に計画した具体的な研究項目は、 1.大腸癌組織の網羅的分子解析データの統合解析による分子機構の探索研究 2.大腸癌培養細胞株を用いた分子機構の検証研究 3.大腸癌培養細胞株を用いた耐性克服法の探索研究、である。網羅的分子解析データの大腸癌組織の網羅的分子解析データ統合解析による治療耐性の分子機構の探索(高橋信、大内、沖田)を行った。P-DIRECT研究で集めた患者由来大腸癌組織の全エキソーム解析、網羅的メチローム解析、網羅的遺伝子発現解析および網羅的miRNA解析データを統合解析して、特定の遺伝子構造異常、遺伝子発現異常、およびシグナル伝達経路異常(既知の治療耐性因子であるRAS遺伝子変異を含む)と治療耐性との関連を探索した。その結果、(1)遺伝子発現プロファイルによる特定のサブグループが切除不能進行再発大腸癌の1次治療の治療効果や2次治療以降の抗EGFR抗体薬の治療感受性と強く相関することを明らかにした(論文、学会発表)。また、(2)大腸癌細胞株を用いた治療耐性の分子機構の検証実験を行った(高橋雅信)。その結果、miRNAの網羅的解析により、治療抵抗性で予後不良と強く関連するBRAF変異腫瘍と強く相関するmiR-193a-3pを同定し、miR-193a-3pの低発現が抗EGFR抗体薬の治療抵抗性(短い無増悪生存期間)と関連することを明らかにした(論文発表)。しかし、高DNAメチル化型大腸癌細胞(HCT-116, SW48, RKO)が抗EGFR抗体薬に対して治療耐性になる分子機構を明らかにすることはできなかった。今後、さらに研究を進めて薬剤感受性又は耐性機構を明らかにするとともに治療標的を探索する予定である。
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