研究課題/領域番号 |
15H04309
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
越山 雅文 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50724390)
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研究分担者 |
松村 謙臣 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20452336)
馬場 長 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60508240)
濱西 潤三 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80378736)
小西 郁生 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90192062)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 抗VEGF抗体 / 卵巣癌 / 耐性獲得機構 / 発現マイクロアレイ / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
研究に先立って、ID8とHM-1細胞株に対し抗VEGF抗体治療を行い、耐性モデルが構築されるかどうかを確認した。しかし、ID8モデルにおいては、抗VEGF抗体投与後に腹膜播種が形成されず、抗VEGF抗体に対して感受性が高く、当研究計画には適さないモデルであることが分かった。一方、HM-1細胞株をB6C3F1マウスに対し、腹腔内投与または皮下投与を行い、腹膜播種と皮下腫瘍両モデルを作成、腫瘍局注後day4から抗VEGF抗体治療を行った。腹膜播種モデルでは、control群(Rat IgG投与)と比較し、若干の生存期間の延長がみとめられたものの、必ず抗VEGF抗体治療抵抗性に腹膜播種が形成されることが分かった。皮下腫瘍モデルにおいても、治療抵抗性に腫瘍が増大することが分かった。抗VEGF抗体耐性の腹膜播種巣からRNAを抽出し、遺伝子発現マイクロアレイ(n=4)を行った。優位変動遺伝子には、Ptgs2, Ccl17, Ccr1, S100a9, といった腫瘍免疫抑制因子や、Angtl2, Kitl, Pdgfcといった血管新生や細胞増殖因子、CD11bおよびLy6cといった骨髄球系細胞の表面マーカーが抗体耐性群において亢進を認めた。Pathway解析を行ったところ、低酸素に関連するHIF1α関連経路や、IL10,IL1などのサイトカイン関連経路が亢進していた。これらから、抗VEGF抗体耐性には薬剤誘発性の低酸素や免疫抑制が関与していると考え、回収した腫瘍の免疫染色を行ったところ、抗体耐性腫瘍にはCD11b+細胞の増加、CD8+細胞の減少が認められた。低酸素マーカーであるPimonidazoleの免疫染色では、有意に抗体耐性腫瘍でPimonidazole陽性領域が多く認められた。抗VEGF抗体の獲得耐性には低酸素環境や骨髄球細胞の浸潤に伴う免疫抑制が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のH27年度3)まで予定通りのペースで進んでいる。遺伝子発現マイクロアレイの結果を踏まえると、免疫環境の変化という視点から、抗体耐性を克服するという新たな研究の展開が考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
抗VEGF抗体の耐性機序に骨髄球系細胞の浸潤がかかわるかどうか確認するため、抗VEGF抗体と、クロドロン酸や抗Gr-1抗体、抗CXCR2抗体との併用治療を行う。さらに、遺伝子発現マイクロアレイで抽出された、免疫細胞誘導因子であるCcl17やPtgs2、Kitl、S100a9に対する阻害剤を併用し、その治療効果を確認する。そして、当マイクロアレイで抽出できた遺伝子群を、抗VEGF抗体耐性signatureとして定義し、他の公開マイクロアレイデータとの関連性について、Pathway解析を用いて検討する予定である。また、抗体耐性にPD1/PDL-1経路が関与しているかどうか、解析を行っていく予定である。同経路の関与が確認されれば、抗VEGF抗体と抗PD-1抗体との併用治療を行う。上記モデルで抗体耐性が克服できなければ、マウスshRNAライブラリーを用いて、癌細胞における抗VEGF抗体耐性に機能的にかかわる遺伝子の抽出を検討する。 HM-1モデルのほかに、ID8にVegfを強制発現したID8-Vegfや、mycを強制発現したID8-mycを作成し、他の抗体耐性モデルの構築に取り組む。
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