研究課題
既に我々は、新規がん精巣抗原に由来し日本人で頻度が高いHLAクラスⅡ分子により提示され、Th細胞を活性化できる長鎖ペプチドを多数同定して来た。このような長鎖ペプチドのうち、CTLが認識する短鎖ペプチドを内包するものについて、これらを単にヒト樹状細胞に負荷しても、CTLへの短鎖ペプチドのCross presentationは観察されなかった。そこで内容物をエンドソームから細胞質へ効率良く送達できる、低pH感受性ポリマーで修飾されたリポソームに長鎖ペプチドを包埋し、これを樹状細胞に負荷してCross presentationの有無を検討した。しかし、従来の長鎖ペプチドでは奏功したが、今回対象とした長鎖ペプチドについては、残念ながら効果は認められなかった。我々は従来の研究により、担がんマウスにおいて増加するミエロイド系細胞が産生するIL-6が、がん抗原特異的Th1細胞の分化を抑制することにより、CTLを介した腫瘍免疫を抑制することを発見した。今年度は担がんマウスのミエロイド系細胞の膜表面より遊離した、 IL-6 受容体(sIL-6R)とIL-6複合体を介したシグナルに起因する、CD4+T細胞におけるC-Mafの発現増加がTh1細胞の分化を抑制することを明らかにした。さらに口腔癌患者では健常人と比較して、血清IL-6およびsIL-6Rの濃度が増加し、血清sIL-6Rが高値を示す患者では、ミエロイド系細胞表面におけるIL-6Rの発現が減少していることを観察した。また口腔癌患者のCD14+ミエロイド系細胞が分泌するIL-6/sIL-6Rが、ヒトCD4+T細胞からのTh1細胞の分化誘導をc-Mafの発現増強を介して、抑制していることを発見した。つまり、がん患者でも担がんマウスと同様の機序により、IL-6/sIL-6Rシグナルを介してTh1細胞の分化が抑制されていることを明らかにした。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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