研究課題
白血病の治療成績は化学療法および造血幹細胞移植により改善されたものの、まだ治癒率は50%程度であり副作用も多く、新規治療の開発が必要である。本研究は、急性巨核芽球性白血病の分子機序解明とそれに基づく分子標的治療法の開発を目指し、特に下記の2点を本研究の目的として研究を開始した。目的1、急性巨核芽球性白血病の主要遺伝子変異(ドライバー変異)の同定(1)マウスモデルと(2)臨床サンプルにおいてNOTCH系遺伝子の機能消失変異が急性巨核芽球性白血病に多いことを見いだした。さらにこの変異が(3)主要遺伝子変異(ドライバー変異)と言えるだけの生物学的影響があることも確認できたので、NOTCH系遺伝子の機能消失型変異が急性巨核芽球性白血病発症の分子機序であるとの結論に至り、この目的については研究をほぼ終了した。目的2、NOTCHアゴニスト剤を基軸とする急性巨核芽球性白血病に対する新規治療法の開発(1)in vitro 細胞培養系による検討:これまでに複数の NOTCHアゴニスト剤(PEITC、S1P剤)を検討しその効果を確認した。これらに加え現在他のNOTCHアゴニスト剤(抗体など)の効果や、JAK-STAT阻害剤など他剤との併用による効果検討も行っている。(2)in vivo xenograftマウスモデル系を用いた検討:これまでに急性巨核芽球性白血病細胞株を用いた検討を行い、現在白血病臨床サンプルでの検討も行っている。これまでに本研究に関連した論文を19報発表し学会発表を11回行った。本研究助成により行った研究により直接的に得られた結果については現在論文を準備中であり本年度中に投稿し受理されることを目指す。また研究成果の学会発表も精力的に行う。さらにはin vivoでの薬剤効果の結果をふまえ製薬会社と相談のうえ臨床治験への応用の可能性を検討する努力も行ってゆきたいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
1、急性巨核芽球性白血病の主要遺伝子変異(ドライバー変異)の同定予定していた(1)マウスモデルと(2)次世代シーケンスを用いた遺伝子変異の検索を初年度に終了し、NOTCH系遺伝子の機能消失型変異があることを同定した。2年目となる昨年度はさらに発現マイクロアレイ解析を行いNOTCHシグナル系遺伝子群の発現がほとんどの急性巨核芽球性白血病細胞において共通して低下していることを見いだした。またこれらの変異が(3)主要遺伝子変異(ドライバー変異)と言えるだけの生物学的影響があるかという検討を、NOTCH系遺伝子のノックダウン、過発現を白血病細胞に起こすことで検討した。NOTCH系を活性化させると急性巨核芽球性白血病細胞において細胞死が誘導されることを観察した。従って、NOTCH系遺伝子の機能消失型変異が急性巨核芽球性白血病の主要遺伝子変異(ドライバー変異)と結論することができた。2、NOTCHアゴニスト剤を基軸とする急性巨核芽球性白血病に対する新規治療法の開発(1)in vitro 細胞培養系による検討:初年度に検討したNOTCHアゴニスト剤PEITCに加え昨年度はS1P剤などの新たな薬剤も検討しその効果を確認した。(2)in vivo xenograftマウスモデル系を用いた検討:細胞株を用いた検討を初年度には行ったが、これに加え昨年度は白血病臨床サンプルでの検討も行った。
1、急性巨核芽球性白血病の主要遺伝子変異(ドライバー変異)の同定予定していた(1)マウスモデルと(2)次世代シーケンスを用いた遺伝子変異の検索を終了し、さらに昨年度発現マイクロアレイによりNOTCHシグナル系遺伝子の発現が急性巨核芽球性白血病では殆どのサンプルで一様に低下していることも確認できた。さらに(3)主要遺伝子変異(ドライバー変異)と言えるだけの生物学的機能への影響があることも確認できたので、この目的については研究をほぼ終了する。2、NOTCHアゴニスト剤を基軸とする急性巨核芽球性白血病に対する新規治療法の開発(1)in vitro 細胞培養系による検討:初年度、2年目(昨年度)に行ったNOTCHアゴニスト剤(PEITC、S1P剤)に加え、本年度は新たに他のNOTCHアゴニスト剤(抗体など)も検討する。また半固形培地による薬剤感受性の検討も行う(液体培養にくらべ半固形培地は白血病幹細胞分画に対する効果を評価しやすい)。さらにJAK-STAT阻害剤など他剤との併用による効果も検討する。(2)in vivo xenograftマウスモデル系を用いた検討:初年度、昨年度行った細胞株を用いた検討に加え、本年度は白血病臨床サンプルでの検討も行う。本年度は最終年度であるので、これまでの結果をまとめ、学会発表、論文発表を精力的に行う。さらにはin vivoでの薬剤効果の結果をふまえ製薬会社と相談のうえ臨床治験への応用の可能性を検討する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (4件)
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