白血病の治療成績は化学療法および造血幹細胞移植により改善されたものの、まだ治癒率は50%程度であり副作用も多く、新規治療の開発が必要である。本研究は、急性巨核芽球性白血病の分子機序解明とそれに基づく分子標的治療法の開発を目指し、特に下記の2点を目的として研究をおこなった。 目的1、急性巨核芽球性白血病の主要遺伝子変異(ドライバー変異)の同定(1)マウスモデルと(2)臨床サンプルにおいてNOTCH系遺伝子の機能消失変異が急性巨核芽球性白血病に多いことを見いだした。さらにこの変異が3)主要遺伝子変異(ドライバー変異)と言えるだけの生物学的影響があることも確認できたので、NOTCH系遺伝子の機能消失型変異が急性巨核芽球性白血病発症の分子機序であるとの結論に至り、この目的については研究をほぼ終了した。 目的2、NOTCHアゴニスト剤を基軸とする急性巨核芽球性白血病に対する新規治療法の開発(1)in vitro 細胞培養系による検討:複数の NOTCHアゴニスト剤(PEITC、S1P剤、抗体)を検討し、PEITC単剤およびJAK-STAT阻害剤との併用、また抗体単剤による強い細胞増殖抑制効果を観察した。(2)in vivo xenograftマウスモデル系を用いた検討:急性巨核芽球性白血病細胞株を用いた検討を行い、抗体がin vivoに於いても細胞増殖抑制効果を示すことを確認した。 3年間の助成期間中に本研究に関連した論文を28報発表し学会発表を筆頭演者として18回行った。本研究助成により行った研究結果をまとめた論文は現在査読中であり本年度中に受理されることを目指す。学会発表についてもこれまでと同様に論文発表後まで精力的に行う。さらにはin vivoでの薬剤効果の結果をふまえ製薬会社と相談のうえ臨床治験への応用の可能性を検討する努力も行ってゆきたいと考えている。
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