研究課題
dynAPを発現させたNIH3T3細胞(NIH3T3/dynAP)はヌードマウスに腫瘍を形成する。形成された腫瘍は豊富な血管を持ち、細胞間の接着が緩んだ独特の構造を取る。dynAPの発現は、細胞の生存・増殖を支持するAktのリン酸化を亢進し、血管形成の必須因子であるアンジオポエチン1の発現を上昇させ、がんの浸潤・転移に関わるE-cadherinレベルを低下させる。本研究は、dynAPによるがん化の分子機構を解明し、そのがん化機能を阻害する薬物を創製することを目的とする。1. dynAPによるがん化の分子機構の解明アノイキスとは、その生存や増殖にマトリックスへの接着を必要とする細胞が、マトリックスのない条件におかれた場合にアポトーシス死する現象であり、アノイキス抵抗性は細胞のがん化を示す有力な指標とされている。NIH3T3/dynAPは足場のない3次元培養で活発にスフェロイドを形成し、アノイキス抵抗性を示した。さらに、NIH3T3/dynAPを2次元と3次元で培養し、3次元培養特異的に発現変動する遺伝子をDNAマイクロアレイにより解析した結果、アノイキス抵抗性において重要な働きをするインテグリンファミリーなどの遺伝子を同定した。2. dynAPのがん化機能を阻害する低分子性化合物の探索・同定NIH3T3/dynAPは、通常の2次元培養ではコントロール細胞と増殖は変わらないが、低接着U底プレート上の3次元の単スフェロイド形成量を高速細胞スキャナーで解析した場合、顕著な増殖の差が観察される。そこでdynAPのがん化機能を選択的に阻害する低分子性化合物を探索・同定するために、スフェロイドの体積量を指標として、化学療法基盤支援活動より提供された標準阻害剤キット(360種の生理活性化合物、抗がん剤より構成)を用いてスクリーニングを実施した結果、17化合物が増殖阻害を示した。
2: おおむね順調に進展している
dynAPによるアノイキス抵抗性に関わる候補遺伝子を同定し、またNIH3T3/dynAPのスフェロイド形成に対して選択的な阻害作用を示す化合物を取得できたから。
1. dynAPによるがん化の分子機構の解明DNAマイクロアレイ解析により3次元培養特異的に発現誘導した遺伝子について、qPCRで発現量変動を確認した後、RNA干渉によりdynAP発現依存的なスフェロイド形成能が減弱することを確認する。2. dynAPのがん化機能を阻害する低分子性化合物の探索・同定NIH3T3/dynAPのスフェロイド形成に対して選択的な阻害作用を示した17化合物のうち、再現性が確認された化合物に関して、その阻害機構を解析する。
すべて 2015
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PLoS One
巻: 10 ページ: e0135836
10.1371/journal.pone.0135836