研究課題
申請者らは、癌の発育進展の多様な段階に関与するマスター的シグナル伝達分子である受容体型チロシンキナーゼc-Metを標的とした新規低分子標的薬のリード化合物の創製研究を進めている。これまでに、c-Metのキナーゼ触媒部位であるATP結合部位への親和性を示す化合物を探索してきたほか、それ以外の部位に結合してキナーゼ活性を抑制性に制御する新規ペプチドVpepを見出した。そこで、この新規ペプチドVpepの働きと構造を詳細に検討し、新たなアロステリック阻害剤(Allosteric Inhibitor: Ai)のデザイン・合成に繋げてきた。このAiを従来型のキナーゼ阻害剤(Catalytic Inhibitor: Ci)と組み合わせ、更に強い阻害活性を持つデュアル・インヒビターの創製を進めている。今年度までに進展したのは以下のステップである。1) Vpepミメティック低分子化合物Aiのさらなるデザイン改善と化学合成を進め、Metキナーゼ活性の阻害効果を指標に、より低濃度のIC50を有する化合物候補を見出した。2) Ciとして従来よりもさらに低いIC50のMetキナーゼ阻害化合物をデザインし、Ci-Ai のデュアル・インヒビターの創製に適した化合物のスクリーニング作業をさらに進めた。3) X線結晶解析によるVpep及びAiの結合様式決定の前段階として、無細胞系を用いたMetキナーゼドメイン部分の組換えタンパクを作成し、Western blotにより精製を確認し、Metキナーゼ活性の確認も行った。現在、Metキナーゼドメインタンパクの大量生成、精製・純化のステップをさらに進めている。4) 以上の薬剤デザインとは別に、胃癌検体を用いてMet発現と予後の関係を解析し、Met陽性の腫瘍はH. pylori感染で予後不良を示すが、H. pylori感染がない場合には予後との有意な相関がないことを見出した。このことは、胃癌におけるMet阻害剤使用の有効性予測にもつながる結果である。
3: やや遅れている
昨年と同様、Vpepミメティック低分子化合物であるAiをデザイン並びにその化学合成については、有意なMet阻害活性を示す化合物を複数見出しており、薬剤デザインとその効果の検証については順調に推移している。その一方で、Vpep及びAiの結合様式をX 線結晶解析により決定するために、Metキナーゼドメイン部分の組換えタンパクを作成してこれを詳細に検討しているところである。既に、愛媛大学プロテオサイエンスセンターの協力を得てMetキナーゼドメイン部分の遺伝子組換え並びにそのコンストラクトをもとにした小麦を使った無細胞系タンパク精製も小規模ながら進んでいる。しかしながら、Metキナーゼタンパクの大量生成、精製・純化に手間取っており、このステップが律速要因となっている。
愛媛大学プロテオサイエンスセンターとさらに密な連携を図り、Metキナーゼタンパクの大量生成、精製・純化のステップを加速させることにしている。Metキナーゼドメインの結晶化並びにX線結晶構造解析による結合様式の解析については、高エネルギー加速器研究機構(KEK)との連携を推し進める。これと並行して、Ai及びCiの薬剤デザイン改良は別途継続する。
Collaborationsとして記載あり。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (24件) (うち国際共著 3件、 査読あり 24件、 オープンアクセス 17件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (55件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Br J Cancer
巻: 116, no. 6 ページ: e2
10.1038/bjc.2016.371
Ann Rheum Dis
巻: 76, no. 5 ページ: 869-877
10.1136/annrheumdis-2016-209632
Mod Rheumatol
巻: 27, no. 3 ページ: 553-555
10.1080/14397595.2016.1218413
Cancer Sci
巻: 108, no. 3 ページ: 322-330
10.1111/cas.13146
Int J Mol Sci.
巻: 18(4). ページ: E851
10.3390/ijms18040851
Biol Pharm Bull
巻: Mar 24 ページ: 1-2
10.1248/bpb.b17-00083.
Bioorg Med Chem Lett
巻: 27(5) ページ: 1169-1174
10.1016/j.bmcl.2017.01.070.
Biochem Biophys Res Commun
巻: 484(3) ページ: 668-674
10.1016/j.bbrc.2017.01.173
Bioconjug Chem
巻: 28(2) ページ: 507-523
10.1021/acs.bioconjchem.6b00627
PLoS One
巻: 11, no. 10 ページ: e0163804
10.1371/journal.pone.0163804
Drug Metab Pharmacokinet
巻: 31, no. 6 ページ: 464-466
10.1016/j.dmpk.2016.07.004
Biomed Eng Online
巻: 15, no. 1 ページ: 98
10.1186/s12938-016-0220-z
Sci Rep
巻: 6 ページ: 19329
10.1038/srep19329
Ann Surg Oncol
巻: 23 Suppl 2 ページ: S257-265
10.1245/s10434-015-4466-7
巻: 6 ページ: 31003
10.1038/srep31003
巻: 75, no. 4 ページ: 652-659
10.1136/annrheumdis-2014-206191
Nucleosides Nucleotides Nucleic Acids
巻: 35, no. 10-12 ページ: 536-542
10.1080/15257770.2016.1149192
巻: 6 ページ: 25360
10.1038/srep25360
巻: 6 ページ: 20148
10.1038/srep20148
Tokyo Jikeikai Medical Journal
巻: 131(5) ページ: 141-147
Bioorg Med Chem.
巻: 24(18): ページ: 4509-4515
10.1016/j.bmc.2016.07.060
Toxicol In Vitro
巻: 35 ページ: 202-211
10.1016/j.tiv.2016.06.003
Biol Pharm Bull.
巻: 39(7) ページ: 1224-1230
10.1248/bpb.b16-00080
巻: 39(5) ページ: 869-873
10.1248/bpb.b15-00710
https://vandewoudelab.vai.org/