研究課題
本研究では、単一細胞レベルの解析に応用可能な転写開始点解析、エピゲノム解析(オープンクロマチン解析とDNAメチル化解析)手法の基盤技術開発を行った。これを用いて遺伝子の発現量および転写制御機構の細胞間多様性について網羅的な記載を試みた。基盤技術の構築については、DNAメチル化等の一部技術については、安定的な実験系の確立には至らなかったものの、その他の項目については基盤技術を確立することができた。また、構築された技術基盤を多くの研究者に共同研究の形で提供することができた。申請者自身でも構築された実験系を用いて、がん細胞における遺伝子発現の揺らぎについての解析を行った。解析にはヒト肺腺がん由来培養細胞株および抗がん剤耐性を獲得したその分離株を用いた。抗がん剤には、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤GefitnibおよびRET融合遺伝子に有効性を持つマルチチロシンキナーゼ阻害剤vandetanibを用いた。前者については感受性細胞としてPC9細胞株、耐性細胞としてH1975細胞株を、後者については、感受性細胞としてLC2/adを、また感受性株については当研究グループで樹立したLC2/ad-R細胞株を用いた。特にLC2/ad-R細胞株については、エキソーム解析から相互にほぼ同一のゲノム配列を有しながらも、一部の遺伝子について遺伝子発現量が単一細胞間で顕著な多様性を示すことを明らかにした。PC9細胞及びH1975細胞における薬剤刺激時の細胞応答から、薬剤感受性株においては、細胞集団中に数%の頻度の細胞において、DUSP遺伝子等の細胞の休止化に関連する遺伝子の発現誘導が惹起されることが観察された。また、公共がんゲノムデータベースTCGAを用いて臨床肺腺がんにおいて同様のプロファイルを検索したところ、生存予後に劣る症例について同様の遺伝子発現制御の切り替えが行われている可能性が示唆された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Scientific Reports
巻: volume 8 ページ: -
10.1038/s41598-018-21161-y