研究実績の概要 |
まず、ヒト因子由来完全再構成型翻訳システムを完成させた。つまり、eIF1, eIF1A, eIF2, eIF2B, eIF3, eIF4AI, eIF4B, eIF4GI, eIF4E, eIF5, eIF5B, DHX29, eEF1, eEF2, eRF1, eRF3, 40Sリボソーム, 60Sリボソーム, アミノアシルtRNA合成酵素 (ARS)そして tRNAsを精製し、それらを試験管で混合し、更にアミノ酸や核酸を添加した。このシステムに5末端にキャップ構造、3末端にポリA構造を持ったmRNAを投入すると、キャップ構造やポリA構造に依存してコードされたタンパク質が合成された。つまり、ヒト細胞内で行われているタンパク質合成を忠実に再現している試験管内翻訳系が完成した。 そこで、この系でRNAウイルスを合成するために、脳心筋炎ウイルス(EMCV)のゲノムRNAを投入し、まず、合成されるタンパク質を観察した。EMCV RNAは2300アミノ酸で構成されているオープンレーデイングフレームを持つが、C末端にある3D(RNA複製酵素)と3C(プロセッシング酵素)との融合タンパク質3C-3Dの合成が観察された。このことは、この再構成系で、EMCV由来のすべてのタンパク質が合成されていることを示し、また3Cによるプロセッシングも近接部位に関してはうまく行われていることを示している。途中の2A2B間のプロセッシングも行われており、L1A1B1C1D2Aの合成が確認された。しかし、ウイルス殻を構成する1A1B1C1D間のプロセッシングは行われておらず、3Cがその部分には働いていないことが示された。つまり、この再構成系には何か足らない因子があることが判明した。その不足している因子として、シャペロンタンパクかまたは、膜成分が挙げられる。
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