研究課題
前年度に完成したヒト因子由来再構成型翻訳システムを用いて、C-型肝炎ウイルス(HCV)の翻訳開始機構に関し新たな知見を見出した(Mol.Cell 74:1205, 2019)。HCVの翻訳はそのIRES (internal ribosomal entry site)にribosomeが直接結合することにより開始する。そのメカニズムを探るために、HCV IRESとribosomeの結合様式をヒト細胞抽出液を用いて調べた。すると、HCV IRESはポリゾームに存在していることがわかった。この結果を基に、我々はHCV IRESは翻訳途中のribosomeに結合するのでは、という仮説を立てた。そこで我々は、ヒト因子由来再構成型翻訳システムにて、ribosomeがcap-mRNA上で翻訳停止している状況をつくり、そこにHCV IRESを添加した。その後ribosome-新生鎖複合体を精製しクライオ電子顕微鏡で観察した。結果、HCV IRESはcap-mRNA上を翻訳しているribosomeに結合することがわかった。更に、HCV IRES mRNA上を翻訳しているribosomeを観察するとそのribosomeに翻訳中のIRESが結合したままになっていた。また、ヒト因子由来再構成型翻訳システムにおいて、HCV IRES mRNAの翻訳は、cap-mRNAが共存する方が単独で翻訳を行うより翻訳活性が高い、ということが判明した。これらの結果から、HCV IRESは翻訳中のribosomeに取りつき、翻訳終了後ribosomeを独占し効率よくHCVタンパク質の合成を行う、ということが分かった。従って、ヒト因子由来再構成型翻訳システムを用いてRNAウイルスの戦略を試験管内で再現しそれを可視化することにより、RNAウイルスの生活環に関し新たな知見を得ることに成功した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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J. Biochemistry
巻: - ページ: -
10.1093/jb/mvaa032
10.1093/jb/mvaa022
10.1093/jb/mvaa021
Mol.Cell
巻: 74 ページ: 1205-1214
10.1016/j.molcel.2019.04.022
http://www.eng.u-hyogo.ac.jp/group/group37/