Tbx5/MKL2転写活性化複合体 Tbx5/MKL2による転写活性化には、A/T-rich配列に結合する転写因子が関与することを明らかしにしたが、この分子実態を探索し、候補となるものを複数同定した。この結果は、力学刺激が心臓での ANF(Nppa)遺伝子の発現誘導を起こすメカニズムが予想以上ぬ複雑で、多因子からなる転写複合体の機能が必要であることを意味している。加えて、MKL2 は、伸展、せん断応力などの力学刺激に対して、数分という、極めて短時間で反応して核内にシャトルすることがわかった。また、細胞を静置培養しても、一過性で短時間の核内移行を示すこともわかった。このような迅速な動態は、これまでに報告されておらず、予想外の知見であった。この詳細を解析し、迅速な核内移行には Ca が関与していることがわかった。さらに、この Ca 依存的な核移行の上流に位置し得るシグナルを同定する目的で探索を行ったところ、せん断応力応力に対する反応に関しては、Purinergic receptor が関与しており、せん断応力によって惹起される ATP 放出が関わっていることも明らかとした。 MKL2 の機能として、細胞のエネルギー代謝制御に重要であることを示してきた。代謝、特にエネルギー代謝は、ゼブラフィッシュなどで解析することに多くの困難がともなる。これを解消し、また、ヒトへの考察も考え、MKL2 KO マウスの作製を行った。MKL2 KO 個体は、これまでに出生後すぐに死亡すると考えられてきたが、我々は MKL2 KO 個体を作出することに成功し、眼、筋肉、脂肪組織、血管などに、大きな変化を示すことが明らかとなった。この個体が力学刺激に不応であるという視点から、解析することが可能となった。
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