研究課題/領域番号 |
15H04330
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
升方 久夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00199689)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | テロメア / 核内局在 / Mcm10 / デグロン |
研究実績の概要 |
【1】複製開始点活性化におけるMcm10の役割の解明:複製開始過程では、G1期にMcm2-7六量体が2つ結合したダブル六量体として染色体複製開始点に結合するが、複製開始過程のいずれかでMcm2-7シングル六量体となって複製フォーク形成に至る。どの段階でダブル六量体からシングル六量体に分離するかを明らかにするため、分裂酵母S. pombeのmcm4+をmcm4-PAタグを付加し、さらにタンデムにmcm4-9mycタグ遺伝子を組みこんだ株を作成した。この株では、Mcm4-PAとMcm4-9mycタンパク質が等量発現し両者ともMcm2-7複合体として機能を有することを確認した。 【2】複製開始点活性化タイミング制御における核内局在の役割解明:分裂酵母を用いて複製タイミング制御と核内局在の関連を明らかにするため、テロメア因子Taz1, Rif1に制御される後期複製開始点3個所と初期開始点2個所の近傍にlac0リピートを組み込み、発現させたLacI-GFPのシグナルを高解像度顕微鏡で解析した。核膜とテロメアとの相対位置をそれぞれIsh1-mCherry とTaz1-mCherryで検出し、統計的解析を行った。後期開始点は細胞周期を通じて核膜内縁に局在し、さらにG1-S期にテロメアに隣接を示したのに対し、初期開始点は核内のランダムな局在を示した。これらの後期開始点特異的局在は、複製タイミング制御に必要な「開始点に隣接するテロメア様配列」と、Taz1, Rif1に依存し、時間的空間的制御がともにテロメア因子により制御されることが示唆された。 【3】複製開始因子Sld3の機能解析:Sld3はS期での複製開始点活性化過程で、Mcm2-7ダブル六量体がDDKキナーゼでリン酸化されると最初に結合する重要因子であり、その結合に必要な機能ドメインを解析した。Sld3のN末は効率のよい複製に必須であり、N末同士が相互作用することを見いだした(遺伝研、田中誠司博士と共同研究)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複製タイミング制御に関しては、後期開始点と初期開始点の核内局在が大きく異なることを示す統計的結果を得ることができ、さらにテロメア因子への依存性など多くの新たな知見が得られた点で大きく進捗した。また、複製開始過程でのヘリカーゼ活性化メカニズムを解明する計画においては、異なるタグを付加したMcm4を同時に発現させることに時間を要しやや計画が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
後期複製開始点が核膜ならびにテロメアへの隣接することがタイミング制御に必要であるか、あるいは核内局在と複製タイミング制御には直接の因果関係がないのかを明らかにすることが重要と考えている。複製開始点をテロメア近傍に人為的に繋ぎとめる(tether)して、後期タイミングに制御されるかどうかを明らかにする。 複製開始でのヘリカーゼ活性化機構については、G1期でのダブル六量体検出を行い、さまざまの複製開始欠損条件でダブル六量体の量的変化を計測する。
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