研究課題
1)初期翻訳におけるmRNA品質管理とタンパク質翻訳制御解析2)NMDと細胞ストレス応答の分子機構の解析について研究を行った。1)について、平成28年度は、SMG1により制御されるUPF1に結合するRNAの次世代シークエンサーによる解析結果について、共同研究によりバイオインフォマティクス解析を進めた。さらに、NMDと翻訳終結リードスルーの関係について、解析を進め、動物細胞においては、NMDと翻訳終結リードスルーが異なる分子機構により制御されることを明らかにした。この結果から、翻訳リードスルー薬による遺伝性疾患治療において、NMD制御薬開発が、変異mRNA蓄積を誘導することで協調的に作用する薬剤の同定につながることが明らかになった。2)について、SMG1の新たなストレス応答機構について解析を進め、ストレス依存的SMG1活性化を見いだした。また、SMG1が様々なストレスにおいてNMDと排他的に新たに同定した基質に作用することを明らかにした。一方で、SMG1抑制因子として機能するSMG8やSMG9のノックダウンは、新機器質のリン酸化を促進する。さらに、新規に同定したSMG1阻害剤を用い、SMG1が機能する細胞ストレス機構について解析を進め、SMG1がp53を初めとするDNA損傷ストレス応答因子の上流因子として機能すること、SMG1によるp53の直接のリン酸化に加え、ATMの活性調節にも機能することを発見し、その作用機序の解明を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
平成28年度は、SMG1についての知見を1報の英文総説に、mRNAの3'非翻訳領域による翻訳制御の知見を1報の英文総説として発表した。また、NMDと翻訳リードスルーを切り分けて検出可能なレポーターシステムとNMD阻害と翻訳リードスルーの協調効果を検出可能なレポーターシステムの樹立に成功した。これらを用いて、既報の化合物の再検証を進めると共に、NMDとリードスルーの関係を明らかとすることに成功した。さらに、SMG1によるストレス応答機構についても順調に解析が進んでいる。
平成29年度は、転写後制御レポーターシステムとSMG1によるストレス応答機構について論文化を進める。と同時に、昨年度までの研究をさらに発展させる。さらに、SMG1が関わる細胞のストレス応答と、新たな基質を探索する。そのために、SMG1, ATM, ATR, DNA-PKの4つの似た基質特異性を有するタンパク質リン酸化酵素の基質をペプチドアレイ法を用いて確定させる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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