研究課題
本研究では、減数分裂を制御する分子機構を明らかにすることを目標とし、分裂酵母の減数分裂制御において重要な役割を果たす三つのRNA結合タンパク質Mei2、Mmi1、Spo5の機能解析を進めている。Mei2は、減数分裂開始のスイッチとしての役割と、減数分裂の進行に不可欠な役割を果たすタンパク質である。Mmi1は、減数分裂期に発現するRNAの分解を誘導すると同時に、減数分裂遺伝子の条件的なヘテロクロマチン化に関与することが示されている。Spo5についても、減数分裂の進行において重要な働きをしていることが示されている。しかし、三者の果たす役割については、多くの謎が残されている。本研究では、これらRNA結合タンパク質の機能の解明を通じて、減数分裂の制御系の詳細に迫る。Mei2と結合しているRNAを明らかにするための条件検討を進めた。Mei2を減数分裂期の分裂酵母より精製し、同時に得られるRNAを単離するため、非常に不安定なタンパク質であるMei2を効率よく精製する系の確立を進めた。Mmi1が、様々なレベルで遺伝子発現制御に関わるCcr4/Not複合体を呼び込むことで、標的遺伝子のヘテロクロマン形成を促進していることを明らかにした。また、Mmi1の標的因子の解析を進め、細胞質ダイニンの制御因子ダイナクチン複合体のサブユニットを複数同定し、それらがダイニンの局在制御、活性制御で果たす役割を明らかにした。Mmi1によるRNA分解誘導についてより詳細な解析を行うため、標的RNAの細胞内での挙動を観察する系を立ち上げた。一分子FISH法を導入し、標的RNAの局在観察を行った。同時に、蛍光タンパク質を用いて、生細胞内でMmi1標的RNAの局在を観察できる株の作製を進めた。これらの手法を応用し、Mmi1標的RNAの細胞内での挙動を観察していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
Mei2と遺伝学的に関連する因子の解析に関しては、遺伝子破壊株の作製、発現解析などを行ったが、Mei2の発現制御に関わることが期待される因子が得られたのみで、Mei2の機能に迫る情報は今のところ得られていない状況にある。今後、Mei2の発現制御に関わる可能性がある因子の解析を行うとともに、その他の因子群について、解析を進めていく予定である。Mei2と相互作用するRNAの探索については、非常に不安定なタンパク質であるMei2を大量精製する系を見出すことができた。この系を用いてRNAの同定を進めたい。Mmi1については、標的RNAの局在を観察する系が構築できたので、今後各種関連変異体を用いて解析を進めることで、新たな知見が得られると期待される。また、Mmi1とCcr4/Not複合体との予期せぬつながりを示すことができた。さらに、Mmi1の標的を解析することで、減数分裂期の細胞骨格制御に関わる重要な因子を新たに同定することが出来た。本年度は、Mei2とMmi1の解析に重点を置いたため、Spo5の解析については来年度以降に繰り越した。
Mei2を精製する系が確立されてきたので、減数分裂期の細胞よりMei2を効率よく精製し、次世代シーケンサーを利用して相互作用するRNAの特定を進める。相互作用RNAが明らかになったら、それらがMei2を制御する因子である可能性と、逆にMei2がそれらのRNAを制御している可能性の両方を視野に入れて、解析を進める。また、Mei2と遺伝学的に関連する因子についても、破壊株、過剰発現株などを用いて、より詳細な解析を行うことで、Mei2との具体的な関係を明らかにする。Mmi1の標的RNAの挙動を、Mmi1関連因子の変異体を用いて観察することで、Mmi1が誘導するRNA分解の空間的制御を明らかにする。Mmi1は核内で点状に局在することが分かっているが、Mmi1と標的RNAを同時に観察するなどして、Mmi1の点状局在の意義を明らかにしていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)
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