研究課題/領域番号 |
15H04334
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
田中 勲 北海道大学, 先端生命科学研究院, 名誉教授 (70093052)
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研究分担者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / rRNA修飾 / アミノアシル合成酵素 |
研究実績の概要 |
古細菌におけるCys-tRNA(Cys)生合成経路は,tRNAにアミノ酸を直接付加する通常の一段階の反応ではなく,2つの酵素(SepRS, SepCysS)が触媒する二段階の反応から成り立っている.近年,研究代表者らは,この反応経路に必須の第3のタンパク質SepCysEを同定し,SepCysEを含めた3者複合体(Transsulfursomeと命名)が反応の機能単位であることを明らかにした.本研究では,そのTranssulfursomeとtRNA複合体のX線結晶構造解析を行い,構造をもとに二段階の反応から成るアミノアシル化反応の分子機構を解明し,それを通して生命進化の謎に迫ることを本研究の目的としている.これまでの結晶構造解析により,SepCysEは2つのリンカーでつながった3つの構造単位から成り立っており,全体として,N-helix : linker1 : NTD : linker2 : CTDという構造をしていることが明らかになった.この構造をもとに SepCysEは,N-helixとNTD を利用して,SepRSとSepCysSを結合させ,また,CTDがtRNAを捕まえた後,2つのリンカー部の構造変化によって,tRNAをSepRSの活性部位からSepCysSの活性部位へ移動させるという新しい作業仮説を立てた.28年度には,この仮説を検証するために様々な変異体を作製し, tRNA結合実験および活性測定実験を行い,さらに,電子顕微鏡観察をも行い,実際に,TranssulfursomeがSepCysEの2本のリンカーを利用して構造変化をしながら,1つ目の反応部位から2つ目の反応部位へtRNAを運んでいることを証明した.またその結果をもとに論文を作製して投稿した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度,二年度の計画を順調に実行し,2種の複合体の構造解析に成功して,現在,論文投稿中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでのX線結晶構造解析により, transsulfursomeは中心にSepRS4量体を持ち,また両端にはSepCysS2量体が結合しており,その中間の位置に SepCysE2量体が存在して,N-helixとNTDで,SepRSとSepCysSとを結び付けていること, SepCysEのCTDはtRNA結合ドメインであること,これらの3つのドメインは2つのリンカーでつながっていることを明らかにした.さらに,この構造をもとに,電子顕微鏡や活性測定実験の結果と併せて,transsulfursomeは,SepCysE のCTDによってtRNAを捕まえ,2つのリンカーを使ってSepRSからSepCysSへtRNAを移動させることを証明した.29年度には,この反応機構を国際誌,および学会で発表し,さらにはホームページなどを利用して広く一般に公表する.
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