研究課題
昨年度、亜鉛結合型のERp44のX線結晶構造解析に成功することにより、亜鉛イオンが誘起するERp44の構造変化を2.4オングストロームという原子分解能で解明した。さらに亜鉛イオンによって、(i) ERp44の細胞内局在が可逆的に変化すること、(ii) ERp44と基質との結合解離が制御されること、(iii) ERp44の基質逆行輸送活性が制御されることを明らかにした。本年度は、以上の仕事を完成させ、論文を国際一流雑誌に発表することを最優先として仕事を進めた。その結果、近日中に本論文が権威ある国際雑誌にアクセプトされる見込みである。これに加え、分泌経路に存在する亜鉛トランスポーターを系統的にノックダウンすることにより、ERp44の機能制御を司る亜鉛トランスポーターの同定を試みた。その結果、ERp44の細胞内局在と基質逆行輸送活性を制御する亜鉛トランスポーターを同定するに至った。現在は、その亜鉛トランスポーターによるERp44の構造機能制御機構の解明を系統的な相互作用実験、網羅的な変異体解析などにより、生化学と細胞生物学の両面から進めている段階である。さらに、ERp44とKDEL受容体間の相互作用機構の解明にも取り組み、基質、pH、亜鉛依存的な両タンパク質間の結合様式の解明を進めた。すでに安定なERp44-基質-KDEL受容体三者複合体の調製条件が詰められつつあり、この調製法を確立した後はクライオ電子顕微鏡およびX線結晶構造解析による高分解能構造解析を近未来的に進める予定である。これにより、ゴルジ体から小胞体への逆行輸送過程におけるERp44の基質認識、およびKDEL受容体によるKDEL配列認識機構が解明されると期待される。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (2件) 備考 (1件)
Structure
巻: 6 ページ: 846-857
10.1016/j.str.2017.04.001.
Angewandte Chemie
巻: 56 ページ: 5522-5526
10.1002/anie.201701654.
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 114 ページ: 3224-3232
10.1073/pnas.1621426114.
Nature Communications
巻: 8 ページ: 1177
10.1038/s41467-017-01311-y.
http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/inaba/