研究課題/領域番号 |
15H04336
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
川村 出 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20452047)
|
研究分担者 |
五東 弘昭 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80635235)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 固体NMR / レチナール / 膜タンパク質 |
研究実績の概要 |
レチナール結合型タンパク質は光を吸収して、発色団レチナールが異性化し、タンパク質構造変化によって機能する。そのためレチナールとタンパク質の間の相互作用は機能を制御する上で極めて重要な部分である。そのような反応中心の構造を理解するために、固体NMRを用いたレチナールおよびその周辺残基を含めたレチナール結合ポケットの精密な構造解析法の開発を進めている。本年度は、レチナール結合部分の固体NMR構造解析法の開発とレチナール誘導体の変換法の構築を行なった。レチナールとの相互作用を見るためにいくつかの微生物型ロドプシンに空間的な原子間距離に基づいた測定法を適用し、レチナール結合部位選択的に信号を観測することに成功した。極大吸収波長と化学シフトの相関関係、近傍Tyrの水素結合とロドプシンの機能のタイプとの相関、周辺アミノ酸残基との相互作用が発色団の配座に及ぼす影響などを検討することができた。さらに、安定同位体標識戦略などを再検討することができ、新たなNMR実験計画を考案することができた。また、研究分担者の五東准教授と引き続き協力して研究を進め、レチナール誘導体の変換法として、マイクロリアクターを利用した反応系を構築し、モデル化合物で効率的かつ選択的に進行することを証明した。この反応系は次年度の研究の推進に重要なものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レチナールと周囲のアミノ酸の相互作用の観測に成功し、NMR情報からわかる機能との関係を示した(I. Kawamura, et al. A. Shigeta et al. (2017) Biochemistry)。また、特にロドプシンタンパク質の構造解析に有効な光照射-固体NMRの研究を2つの著書にまとめてきた。マイクロリアクターなどを用いた実験系を構築し、非標識レチナールオキシムをもとにしたレチナール誘導体からレチナールへの変換反応について、その効率を向上させることに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
固体NMR測定による13C-13C双極子相互作用を利用した膜タンパク質内部の発色団の二面角の解析など固体NMRの実験計画は引き続き進めていく。高度好塩菌培養過程でセグメント標識レチナールを抽出することは難しい状態であるため、すでに微生物型ロドプシンに埋め込まれているレチナール誘導体として抽出し、それを再変換する反応系の構築に研究計画を変更する。これにより、微生物型ロドプシンにおけるレチナール-タンパク質間相互作用の固体NMR解析を網羅的に実施するために、大腸菌発現系のロドプシンに適用できるようなレチナール誘導体-レチナール変換反応系を構築し、研究を進めていく。
|