研究課題
前年度までに、メタノール資化性酵母P. pastorisを用い、高分子量膜タンパク質に適応する同位体ラベル技術である、メチル基選択的C13ラベル技術、特にこれまでラベルが不可能とされていたVal、Leuメチル基の選択的C13ラベルを高い標識率(70%以上)で達成することができた。しかしながら、C13ラベルアミノ酸前駆体の細胞内取り込みは、低いpHの培養条件で行うため、タンパク質発現量が低下するという問題があった。今年度は培養法を改良し、酸性条件でアミノ酸前駆体取り込みを行った後、pHを中性に戻し標的タンパク質誘導を行う、という2ステップの培養法を確立することに成功した。本培養法により標識率はやや低下するものの、通常の最小培地培養と遜色ないレベルの標識タンパク質を得ることが可能となった。さらに本培養法を活用し、アミノ酸前駆体取り込み期に非標識Leuを添加することで、Valメチル基選択的C13ラベルを行うことに成功した。本アプローチは大腸菌の発現が困難であり、分子量が大きくなりがちなヒト膜タンパク質群のNMR解析に有効な手法になると考える。これらの成果をもとに論文を執筆し、現在投稿中である。一方、昨年度開発した異なる磁化移動方式によるN15核観測TROSY手法を活用し、ナノディスクに再構成した膜タンパク質のNMR観測を行った。N15核直接観測法では、重水素化試料を用いず、高感度の測定が可能なことが理論的に明らかにされていることから、重水素化されていない一回貫通型ヒト膜タンパク質C99を用いナノディスクの再構成を行った。0.2mM以下の試料濃度において、水素核直接観測法では検出が困難なグリシン残基由来のシグナルを観測することができたことから、N15核直接観測法がナノディスク再構成膜タンパク質解析に有効な手法であることが示された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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