研究課題/領域番号 |
15H04342
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
菅瀬 謙治 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00300822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 生物物理 / 分子認識 / NMR |
研究実績の概要 |
リン酸化ユビキチンは、損傷ミトコンドリア上でユビキチン転移酵素Parkinを活性化させ、マイトファジーを誘導する。PINK1とParkinが常染色体劣性遺伝若年性パーキンソン病の原因蛋白質であることから、リン酸化ユビキチン/PINK1/Parkinのシステムは多くの研究者から注目されている。本研究では動的構造の観点からParkinの活性化機構を解明することを目的として取り組んでいる。昨年度は、LB培地でParkinを大量に調整し、ITC実験や蛍光実験による相互作用解析を行った。とくにParkinがもつUbiquitin-like(UBL)ドメインと標的分子であるユビキチンの違いに着目して解析した。UBLとユビキチンは極めて構造が似ており、両者ともにSer65がリン酸化されることによってParkinが活性化することが知られている。UBLを欠損させたParkin(ΔUBL Parkin)とUBLおよびΔUBL Parkinとユビキチンの相互作用様式は大きく異なり、ユビキチンの場合はParkinの構造を大きく変化させるが、UBLの場合はそうはならない。すなわちこの両者は極めて構造が似ているにもかかわらず、ユビキチンはtransのアゴニストとしてUBLはcisのアンタゴニストとして機能していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LB培地ではParkinを大量に調整できるが、NMR実験用の安定同位体標識体を調整するためのM9培地で培養すると不溶性画分に発現することが分かった。このためNMR用試料の調製に少し難航している。しかし、13C標識バリンをLB培地に添加して培養すると、NMRシグナルが観測できるレベルで13C標識バリンがParkinに取り込まれたため、培地の工夫でNMR用試料が調製できることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、LB培地とM9培地または市販の栄養多価の安定同位体培地を混合した培地で、安定同位体標識Parkinの調整を行う。これに成功すれば、同様な培養条件でリン酸化をミミックしたS65E Parkinや実際にリン酸化したParkinを調整する。リン酸化Parkinは、Parkinとリン酸化酵素PINK1との共発現ベクターを作製し、大腸菌を用いた大量発現系を構築する。なお、PINK1のcDNAは、リン酸化活性を持ったリコンビナント蛋白質を調製できるTribolium castaneum PINKのものを用いる。この共発現系を用いると蛋白質は大腸菌内でリン酸化されるはずである。
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