一次繊毛は細胞外からの多様なシグナルを受容するアンテナとして、細胞の増殖・分化の制御や組織の形成・維持に重要な役割を担っている。細胞周期依存的な一次繊毛の形成と崩壊の分子機構を解明するため、本研究では、NDR/LATS経路、TTBK2経路、mTORC1経路、CP110/Cep97複合体の除去経路について解析し、以下の結果を得た。 1、NDR/LATS-YAP経路の機能解析:NDRキナーゼの活性化因子として知られるFurryがLATS1/2やYAPと結合し、LATSのキナーゼ活性の上昇とYAPのリン酸化と細胞質移行を促進することを見出し、FurryがHippo-YAP経路の新たな制御因子であることを明らかにした。 2、TTBK2の活性化機構:一次繊毛形成に重要な役割を持つTTBK2のキナーゼ活性は、Cep164との結合によって自己阻害が解除され、活性化されることを明らかにした。またTTBK2は脊髄小脳変性症の原因遺伝子であり、TTBK2のC末端領域の欠失変異であることが知られている。本研究では、これらの変異型TTBK2はキナーゼ活性が上昇しているわけではなく、減少していることを明らかにした。 3、mTORC1活性阻害による一次繊毛形成機構:一次繊毛形成に対する栄養条件の影響を調べ、グルコース飢餓条件では一次繊毛形成が促進されることを見出した。この時、mTORC1の不活性化とp27KIP1の発現上昇による細胞周期の停止が関与することを明らかにした。 4、CP110/Cep97複合体の除去機構:血清飢餓による一次繊毛形成において、母中心小体からCP110とCep97が除去されることが重要であるが、その機構は不明である。本研究では、血清飢餓によるCep97の減少がプロテアソーム阻害剤で阻害されることを見出し、Cep97がユビキチン化されることを見出した。
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