本研究では,Ras-ERK経路拮抗因子DA-Rafによる組織形成とがん抑制について,次のことがらを明らかにし,これらの分子機構を解明した.(1) TGF-β1による2型肺胞上皮細胞から筋線維芽細胞への上皮・間葉転換に,DA-RafによるRas-ERK経路の抑制が働いていた.(2) 筋細胞分化の過程でみられるアポトーシスと筋細胞分化にDA-Rafが働いていた.(3) KRAS活性化突然変異をもつがん細胞においてDA-Rafの発現が消失していること,またDA-Rafの不活性化突然変異やSNPがK-Rasによるがん化を抑制できないことから,DA-Rafががん抑制蛋白質であるということを明らかにした.
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