研究課題
古細菌S2Pホモログの結晶構造には、進化的に保存された、細胞質側領域から膜ドメイン内部に挿入するβヘアピン様ループ構造(MRE β-loop: membrane reentrant β-loop)が存在しており、RsePも相同な領域を持つ。変異解析の結果RseP MRE β-loopのいくつかの変異は、基質特異的な切断阻害を示し、この領域が選択的基質切断に関わることが示唆された。また、共免疫沈降実験やクロスリンク実験の結果、ループ領域が基質の膜貫通領域と直接相互作用することが強く示唆された。さらに、基質膜貫通領域のヘリックス構造を不安定化させる変異により、RsePのループ領域の変異体による基質切断がアリル特異的に回復した。これらの結果等を踏まえ、「MRE β-loopは、基質の膜貫通領域とβストランド付加機構により特異的に相互作用することで切断を受にくいαヘリックス構造から伸びたβストランド構造への変化を促し、RseP活性部位へと提示する」とのモデルを提唱した。MRE β-loopの機能は、PDZフィルターに加えて第二の基質選別チェックポイントとして働くものと考えている。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究で、RsePのβループ領域が基質の特異的認識と切断に直接関わる事、特に基質膜タンパク質の構造変化を誘起することなど、新規の発見を含め進展があり、国際学術誌に成果を発表した。従って、概ね順調に研究が進展しているものと考える。
本研究で計画した新規基質の探索についてもこれまでに予備的に候補を得ている。本年度は、RseP機能解析とともに、基質の探索とその切断の生理的意義の解析を進めたい。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
eLife
巻: 4 ページ: e08928
10.7554/eLife.08928
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 112 ページ: E5513-E5522
10.1073/pnas.1513001112
J. Bacteriol.
巻: 197 ページ: 2316-2324
10.1128/JB.00079-15.