研究課題/領域番号 |
15H04350
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
秋山 芳展 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (10192460)
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研究分担者 |
森 博幸 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 准教授 (10243271)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膜プロテアーゼ / 大腸菌 / 表層ストレス応答 / 膜内切断 |
研究実績の概要 |
大腸菌のS2PホモログであるRsePは、1回膜貫通型アンチσE因子RseAの膜内切断を通してσE経路表層ストレス応答に関わる。σE経路においては、まず表層ストレスを感知した内膜プロテアーゼDegSがRseAをペリプラズムドメインで切断し、続いてRsePがDegSによる切断で生じた「RseA分解中間体」を膜内部で切断することで、最終的に転写因子σEが活性化する。我々は以前に「RsePのペリプラズム領域に存在するPDZドメインが、大きなペリプラズムドメインを持つ基質の切断を立体障害によって防ぐサイズ排除フィルターとして働く」というモデルを提唱した。一方で我々は、ペリプラズムドメインが小さいにもかかわらずRsePによる切断を受けない膜タンパク質が存在することも見出しており、RsePにはサイズ排除フィルター以外にも基質を選別する機構が備わっていることが推測されていた。我々は、RsePのC1領域にあるMRE β-loopと名付けた領域が、β-ストランド付加機構で基質TMと特異的に相互作用することで切断を受けにくいα-ヘリックス構造から伸びたβ-ストランド構造への変化を促し、RseP 活性部位へと提示する」というモデルを提唱した。 本年度は、さらに解析を進め、RsePのMRE β-loopに隣接する領域には、mjS2Pにはない挿入配列が存在すること、この領域がgroup Iサブファミリーに属するバクテリアのS2Pホモログおいて保存されていることを見出した。この領域がRsePのC1ループ内のN末端側領域に存在することからC1Nと命名し、その機能を解析した。その結果、C1Nが、1) MRE β-loopが正常な機能や構造を取ることをサポートし、一方、2)C1N領域内部のGFGモチーフ領域 でMRE β-loopとは別に基質と相互作用する、という2つの役割を果たしている事を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、C1N領域が、MRE β-loopと機能的相互作用を持つ一方、保存されたGFGモチーフ領域でMRE β-loopとは独立に基質と相互作用しうること等を示した。これらのことから、基質はまずC1Nと相互作用し、その後MRE β-loopへと移行して切断を受ける可能性を示した。この成果はRseP、ひいてはS2Pプロテアーゼによる特異的な基質認識・切断機構の理解に大きく資するもので、膜内切断プロテアーゼ機能の理解に貢献するものである。このため、本研究課題は概ね順調に進展しているものと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、RsePによる基質切断機構の解析をさらに進める。さらに、新たな基質候補としてこれまでに見出していた低分子膜タンパク質の切断とその意義についての研究を進め、RsePの細胞機能の解明をめざしたい。また、共同研究によりRsePの構造を明らかにし、構造・機能相関の理解に努めたい。
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