• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

高精度1分子観察による基本ユニットラフト仮説の検証

研究課題

研究課題/領域番号 15H04351
研究機関京都大学

研究代表者

鈴木 健一  京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 准教授 (50423059)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード糖脂質 / GPIアンカー型タンパク質 / 細胞膜ドメイン / ラフト / 1分子観察
研究実績の概要

最近我々は、1分子観察法を駆使してGPIアンカー型受容体(GPI-anchored receptor = GAR)と糖脂質を細胞膜上で1分子観察し、以下の仮説を得た:ラフト親和性のGARと糖脂質は、特異的ホモダイマーを形成し、ラフトの基本ユニットとなる。糖脂質ラフトの基本ユニットは、受容体の活性制御を行ない、また、GAR基本ユニットは、刺激後に脂質の協同的相互作用によって、安定なGAR会合体ラフトを形成し、シグナル変換のプラットフォームとなる。本研究では、この仮説に基づき、特に、1)GARと糖脂質のラフト基本ユニットの動態解明、2)刺激後、安定なGAR会合体が形成され、シグナル変換を誘起する機構、3)糖脂質の基本ユニットが受容体を制御する機構、を解明することを目的としている。
このため、まず、GARや糖脂質が基本ユニットであるホモダイマーを形成することに一般性があるかどうかを調べた。その結果、新たに3種のGARと4種の糖脂質につき、~0.2秒の寿命を持つホモダイマーを形成することを見出した。
次に、糖脂質ラフトの基本ユニットを形成するために必須の糖鎖部分を決定するために、様々な官能基を欠損したGM3アナログ体のホモダイマー寿命を測定した。その結果、糖鎖中の特定の官能基がホモダイマー形成に重要な役割を担っていることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

さらに多くの種類のGPIアンカー型受容体(GAR)と糖脂質を1分子イメージングすることにより、これらの分子の短寿命ホモダイマー形成に一般性があることを見出した。さらに様々な官能基を欠損したGM3アナログ体のホモダイマー形成を調べ、どの部位が重要な役割を担うのかを同定しつつある。
これらの結果は、まず初めに糖鎖やタンパク質の相互作用で、GARや糖脂質のホモダイマーが誘導され、引き続きコレステロールなどのラフト脂質がリクルートされるという我々が提案してきた仮説を支持している。今後のさらなる研究により、ラフトの理解が急速に進むかもしれない。

今後の研究の推進方策

官能基を欠損させたGM3アナログ体のホモダイマー形成を観察することにより、どの官能基が重要であるかを同定しつつあるが、同時に分子動力学シミュレーション(MD)により、予測された箇所と一致するかどうかを検討する。糖鎖内の各粗子化粒子のすべてのペアについて、お互いが存在しやすい距離を調べ、相互作用部位を推定していく。
また、糖脂質のホモダイマー形成に一般性が見られたので、次に糖脂質ホモダイマーが膜受容体の活性制御にどのように関わっているのか明らかにしていく。これまでに、GM3はモノマーではなく、そのホモダイマーがEGF受容体(EGFR)のアスパラギン結合型糖鎖と糖鎖間相互作用し、EGFRのダイマー化を抑制することを見出している。今後は、GM3ホモダイマーは、EGFRのダイマー化だけでなく、活性化も抑制するのか?という問いを解決していく。
GARのホモダイマー形成にも一般性が見られたので、次に、GARのひとつであるCD59のリガンド添加時に安定な4量体ができて、シグナル分子をリクルートする機構を解明していく。そのために、CD59の4量体の元にリクルートされる貫通型タンパク質と、下流のシグナル分子の3色同時での1分子観察を行う。また、その貫通型タンパク質がない細胞でのシグナル分子のリクルートと比較する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Raft-based interactions of gangliosides with a GPI-anchored receptor2016

    • 著者名/発表者名
      Naoko Komura*, Kenichi G. N. Suzuki*, Hiromune Ando* (*equal contribution), Miku Konishi, Machi Koikeda, Akihiro Imamura, Rahul Chadda, Takahiro K. Fujiwara, Hisae Tsuboi, Ren Sheng, Wonhwa Cho, Koichi Furukawa, Keiko Furukawa, Yoshio Yamauchi, Hideharu Ishida, Akihiro Kusumi and Makoto Kiso.
    • 雑誌名

      Nat. Chem. Biol.

      巻: 12 ページ: 402-410

    • DOI

      10.1038/nchembio.2059

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Confined diffusion of transmembrane proteins and lipids induced by the same actin meshwork lining the plasma membrane2016

    • 著者名/発表者名
      T. K. Fujiwara, Iwasawa, K., Kalay, Z., Tsunoyama, T. A. Y. Watanabe, Y. M. Umemura, H. Murakoshi, K. G. N. Suzuki, Y. L., Nemoto, N. Morone, A. Kusumi
    • 雑誌名

      Mol. Cell Biol.

      巻: 27 ページ: 1101-1119

    • DOI

      doi: 10.1091/mbc.E15-04-0186

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Single-molecule imaging of signal transduction via GPI-anchored receptors2016

    • 著者名/発表者名
      K. G. N. Suzuki
    • 雑誌名

      Methods Mol. Biol.

      巻: 1376 ページ: 229-238

    • DOI

      10.1007/978-1-4939-3170-5_19

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] New insights into the organization of plasma membrane and its role in signal transduction2015

    • 著者名/発表者名
      K. G. N. Suzuki
    • 雑誌名

      Int. Rev. Cell Mol. Biol.

      巻: 317 ページ: 67-96

    • DOI

      10.1016/bs.ircmb.2015.02.004

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Raft organization and function revealed by single-molecule imaging of ganglioside probes2016

    • 著者名/発表者名
      K. G. N. Suzuki
    • 学会等名
      The 3rd International Symposium on Glyco-Neuroscience
    • 発表場所
      淡路国際会議場
    • 年月日
      2016-01-14 – 2016-01-16
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ガングリオシド糖鎖相互作用が誘起するラフトの組織化と機能の1分子観察による解明2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木健一
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 招待講演
  • [学会発表] Unraveling raft organization and function by GPI-anchored receptors and gangliosides2015

    • 著者名/発表者名
      K. G. N. Suzuki
    • 学会等名
      Super-Resolution Seminar
    • 発表場所
      inStem, バンガロール、インド
    • 年月日
      2015-11-26 – 2015-11-27
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 1分子イメージングにより明らかになったラフト組織化と機能のための最初のステップ2015

    • 著者名/発表者名
      鈴木健一
    • 学会等名
      日本顕微鏡学会第71回学術講演会
    • 発表場所
      京都国際会館
    • 年月日
      2015-05-13 – 2015-05-15
    • 招待講演
  • [図書] Glycoscience: Biology and Medicine2015

    • 著者名/発表者名
      K. G. N. Suzuki.
    • 総ページ数
      8
    • 出版者
      Springer
  • [備考] 新しい糖脂質蛍光プローブを開発して細胞膜の”筏ナノドメイン”を解明

    • URL

      http://www.icems.kyoto-u.ac.jp/j/pr/2016/04/05-nr.html

URL: 

公開日: 2017-01-06  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi