研究課題
新型の翻訳後修飾体として最近発見された“ポストリン酸糖鎖”は、その異常が筋ジストロフィーや精神発達遅滞などの疾患に直結することから、生体において重要な役割を担っていると考えられる。しかし、その構造、修飾機序、生理機能について不明な点は多い。本研究では、ポストリン酸糖鎖の構造全貌と修飾に関わる酵素活性を決定し、その生理的・病的意義を解明することを目的とする。本年度は、ポストリン酸糖鎖の中に、哺乳類ではこれまで見出されていない糖鎖ユニット「リビトールリン酸」が二つ連なったタンデム構造として存在していることを発見した。また、筋ジストロフィー原因遺伝子産物のひとつISPDが、リビトールリン酸の糖供与体であるCDP-リビトール合成酵素であることを見出した。更に、福山型筋ジストロフィーの原因遺伝子産物フクチンと、肢帯型筋ジストロフィー2Iの原因遺伝子産物のFKRPが、リビトールリン酸を順に糖鎖に組み込む糖転移酵素であることを発見した。以上の成果から、ポストリン酸糖鎖構造の全容がほぼ明らかになり、その修飾機序も解明された。このことは、筋ジストロフィーがリビトールリン酸糖鎖の生合成不全によって発症するという新たな病態機序の存在を示している。
2: おおむね順調に進展している
初年度の目標であったポストリン酸糖鎖構造と修飾酵素活性を同定できたが、TMEM5の機能解明が残されている。
今年度はTMEM5の機能を明らかにし、さらに、リビトールリン酸修飾の生理的・病的意義を、疾患モデル細胞と動物を用いて明らかにしていく。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Cell Reports
巻: 14 ページ: 2209-2223
10.1016/j.celrep.2016.02.017.
http://www.med.kobe-u.ac.jp/clgene/