研究課題
新型の翻訳後修飾体として最近発見された“ポストリン酸糖鎖”は、その異常が筋ジストロフィーや精神発達遅滞などの疾患に直結することから、生体において重要な役割を担っていると考えられる。しかし、その構造、修飾機序、生理機能について不明な点は多い。本研究では、ポストリン酸糖鎖の構造全貌と修飾に関わる酵素活性を決定し、その生理的・病的意義を解明することを目的とする。本計画において我々は、ポストリン酸糖鎖の中に、哺乳類ではこれまで見出されていない糖鎖ユニット「リビトールリン酸」が二つ連なったタンデム構造として存在していることを発見した。また、筋ジストロフィー原因遺伝子産物のひとつISPDが、リビトールリン酸の糖供与体であるCDP-リビトール合成酵素であることを見出した。更に、福山型筋ジストロフィーの原因遺伝子産物フクチンと、肢帯型筋ジストロフ ィー2Iの原因遺伝子産物のFKRPが、リビトールリン酸を順に糖鎖に組み込む糖転移酵素であることを発見した。一方で、このリビトールリン酸がどのようにリガンド結合性の糖鎖と連携しているかは明らかではなかった。本年度は、筋ジストロフィー原因遺伝子のひとつTMEM5が、リビトールリン酸にキシロースを転移する糖転移酵素であることを発見し、更に、リビトールリン酸とリガンド結合性を結ぶ連携部分の構造を明らかにした。以上の成果から、長年の課題であったポストリン酸糖鎖構造の全容が世界に先駆けて明らかになり、その修飾機序も解明された。以上の結果は、筋ジストロフィーがリビトールリン酸糖鎖の生合成不全によって発症するという新たな病態機序の存在を示し、新たな治療法開発の道を拓くものである。
2: おおむね順調に進展している
2年度目までの目標であったポストリン酸糖鎖構造と修飾機序の全容解明に成功した。糖鎖機能解析についても順調に進行している。
今年度はポストリン酸糖鎖欠損モデルを用いて、糖鎖の生理機能を明らかにしていく。
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http://www.med.kobe-u.ac.jp/clgene/