研究課題
がん化に伴い細胞表面のタンパク質や脂質上の糖鎖構造が変化することがよく知られている。特に、酸性糖鎖であるシアル酸の異常はがん細胞の浸潤転移と密接に関連すると言われてきた。しかし、その実体についてはいまだに不明な点が多い。我々は、「シアル酸による細胞機能制御の分子機構の解明」という課題を掲げ、申請者らの知見を踏まえ、ほとんど知られていない細胞接着による糖鎖発現の変化とその意義に加え、シアル酸によるがん細胞の浸潤・転移・生存の制御機構を解明し、今後のがん研究、がんの予防や治療に貢献する新知見の提示を目指す。ここでは、がん細胞の転移・浸潤・生存に深く関わる細胞接着分子インテグリンα5β1に注目して研究を行った。インテグリンα5β1の様々な糖鎖変異体を用い、β1鎖の膜近傍糖鎖付加部位のα2,6シアリル化やα5鎖の膜近傍糖鎖付加部位のN型糖鎖の分岐化は、がん細胞の増殖移動および分子間複合体形成に重要であることを明らかにした。また、大腸がんの進行の過程においては、シアリル化が動態的に変動する現象を発見した。それらの研究結果は学術論文として発表した。
2: おおむね順調に進展している
がん細胞の転移浸潤と深く関わるN型糖鎖分岐構造とシアル酸の発現に注目し、標的分子であるインテグリンα5β1の特異的な部位にそれぞれのα2,6シアル酸と分岐糖鎖構造の付加の意義を解析した。特にそれらの糖鎖発現とがん細胞の機能制御との関連性およびその分子メカニズムが解明されつつである。
シアル酸によるEMT獲得やがん細胞の転移・浸潤・生存への影響およびその分子メカニズムを解析し、特にα2,3とα2,6シアル酸による異なる複合体形成、機能制御の解明を目指している。今後α2,6のみならず、α2,3シアル酸生合成に関わる複数の遺伝子を操作し、α2,3とα2,6シアル酸を含有する糖鎖の機能を明らかにする。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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http://www.tohoku-mpu.ac.jp/laboratory/drg/index.html