研究実績の概要 |
がん化に伴い、細胞表面のタンパク質や脂質上の糖鎖構造は変化することがよく知られている。特に、酸性糖であるシアル酸の異常はがん細胞の浸潤・転移と密接に関連すると言われてきた。しかし、その実体についてはいまだに不明な点が多い。これまでには、インテグリンを介したがん細胞の増殖・移動の制御にα2,6シアル酸の修飾も重要であることを明らかした(Hang, et al. JBC. 2015;Sci Rep. 2016;MCB. 2017; Hou, et al. Sci Rep. 2016; FASEB J. 2016; Lu, et al., JBC. 2016)。本年度では、複数のα2,3シアル酸転移酵素の中にある特定なα2,3シアル酸転移酵素が選択的にインテグリンを修飾し、機能制御に関わることが明らかとなった(投稿準備中)。さらに、そのシアリル化の制御には、PI4キナーゼIIαとインテグリンα3の複合体形成が重要であることを明らかにした(Isaji, et al., JBC. 2019)。これらの結果はシアル酸に関連する次世代抗がん剤の開発に新たな知見を与えることになると思われる。
|