研究課題/領域番号 |
15H04357
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (30252422)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タンパク質 / ドメイン / フレキシビリティ / 協働性 / 分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、マルチドメインタンパク質の構造フレキシビリティ、ドメイン間の相互作用と機能の協働性を解明することを目指している。具体的には、(1)マルチドメインタンパク質のフレキシビリティを高度な分子シミュレーションによって予測する、(2)異なる機能を持つ複数のドメインから構成されるタンパク質におけるドメイン間の機能の協働性を明らかにする、(3)単量体ではフレキシブルなマルチドメインタンパク質が、集合して多量体を形成するメカニズムを解明する。この年度は、まず目的(1)である、マルチドメインタンパク質のフレキシビリティを高度な分子シミュレーションによって予測することを可能にするため、マルチドメインタンパク質の構造バリエーションを効率的な立体構造サンプリングシミュレーションで生成することに取り組んできた。 研究対象としているFlhAは細菌べん毛の輸送装置を形成するタンパク質であり、細胞質ドメインの構造が得られている。また類縁蛋白質の多量体構造に基づいて阪大・南野准教授や難波教授らによって構築されたモデルがあるので、多量体形成によるフレキシビリティの変化と、変異の影響を明らかにするため、単量体に関してはPaCS-MD(Parallel Cascade Selection Molecular Dynamics)で広い構造空間を探索し、更にMSM(Markov State Model)を用いて、自由エネルギー地形の解析を行った。その結果、温度感受性変異体であるG368Cでは、300Kでは自由エネルギーにはそれほど大きな変化はないものの、315Kではドメイン2と4が近づいたクローズ構造が安定であることを見出した。これはマイクロ秒オーダーの分子動力学計算で得られた結果を自由エネルギーから定量的にサポートする結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FlhAにおいて、おおむね期待通りに大きな構造変化に伴う自由エネルギー変化をPaCS-MDとMSMから計算できたことから、順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き、目的(1)である、マルチドメインタンパク質のフレキシビリティを高度な分子シミュレーションによって予測することを可能にするため、マルチドメインタンパク質の構造バリエーションを生成し、目的(3)についても取り組む。 FlhAは細菌べん毛の輸送装置を形成するタンパク質であり、細胞質ドメインの構造が得られている。類縁蛋白質の多量体構造に基づいて阪大・南野准教授や難波教授らによって構築された9量体モデルを用いた研究を展開する。多量体のマイクロ秒オーダーのMDシミュレーションを行い、多量体形成によるフレキシビリティの変化と、変異の影響を明らかにする。これまでに300Kで1マイクロ秒の計算を既に行っていたが、これを更に延長するとともに315Kでのシミュレーションも開始する。これにより、単量体で見られた温度感受性変異体の効果について9量体でなりたっているのかどうか明らかにする。また9量体形成による効果を解明する。 べん毛モーターの中で回転子の中のリング状構造を構築するFliGに関しては、昨年までに行った多量体構造の予測を発展させる。具体的にはFliMもモデルに含めることで、予測をより現実的なものとすることを目指す。
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