研究課題/領域番号 |
15H04358
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
船津 高志 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00190124)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 1分子計測(SMD) / ナノバイオ / 光ピンセット / 蛋白質 |
研究実績の概要 |
1.miRNAによる遺伝子発現の制御 まず、蛍光標識を施した3種前駆体(pre-miRNA、二本鎖miRNA/miRNA*、一本鎖miRNA) をマイクロインジェクション法により細胞内に導入した。3前駆体の中でpre-miRNAが特に良い細胞内滞留性を示し、また導入pre-miRNAの細胞内局在が今までのmiRNAの細胞内局在に関する知見とも一致することを確認した。次に、ストレス環境下でmRNAが局在するStress GranuleにおいてmiRNA前駆体も局在していることを確認し、標的mRNAとの結合を間接的に捉えた。さらに、標的mRNA発現プラスミドを導入し、導入miRNA前駆体が標的mRNAの翻訳を抑制していることを確かめた。 2.SGによる遺伝子発現の制御 Cy5標識線形アンチセンスプローブによりCOS7細胞内のpoly(A)+ mRNAを蛍光標識し、SGsを形成させた後に固定した試料を用いて、超解像イメージングによる観察を行った。超解像観察の結果、SGs内でmRNAは密度差をもって分布し、顆粒内部で高密度領域を形成して分布していることが明らかになった。mRNA高密度領域個数はSGsの大きさが大きくなるにつれて増加したが、高密度領域サイズはSGsの大きさに関わらず直径約70 nmという常に一定のサイズを持つことがわかった。以上の結果は、SGs内mRNA高密度領域は特定の大きさをもつ構造的単位として機能することを示している。次に、SGs内でmRNA一分子の運動を解析するために、蛍光色素の明滅を応用した新規のmRNA一分子追跡法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.miRNAによる遺伝子発現の制御 固相合成したmiRNAに単に蛍光色素を付けただけではmiRNAの機能が発揮されず、蛍光標識したpre-miRNAを用い、細胞内で成熟miRNAに変換することで活性を持ったmiRNAを得ることができた。蛍光標識したmiRNAの調製法を確立することができたので、来年度以降、miRNAの局在と運動解析が可能になった。 2.SGによる遺伝子発現の制御 超解像観察の結果、SGs内でmRNAは密度差をもって分布し、顆粒内部で高密度領域を形成して分布していることを明らかにしたことは大きな成果である。また、蛍光色素の明滅を応用した新規のmRNA一分子追跡法を開発することができた。これによって、来年度以降、SG内でmRNAのダイナミクスを捉えることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.miRNAによる遺伝子発現の制御 初年度において、蛍光色素またはGFPにより標識したRISCの調製法を確立したので、このRISCと標的mRNAとの結合を解析する。miRNAとして、肺がんで減少する例が知られているlet-7a-1 miRNAを用いる。また、標的mRNAとしてRasのmRNAを用い、培養細胞に強制発現させる。標的mRNAの翻訳抑制を可視化するため、Rasの遺伝子とGFPの遺伝子を繋げておき、GFPの蛍光強度を定量することにより翻訳抑制を評価できるようにする。両者の結合により翻訳抑制が起こり、GFPの蛍光が低下することを定量する。let-7は塩基配列の似たファミリーを構成していることが知られているので、塩基配列の違いによって翻訳抑制がどのような影響を受けるか検討する。以上より、RISCによる翻訳抑制の制御機構を明らかにする。 2.SGによる遺伝子発現の制御 初年度、蛍光色素の明滅を応用した新規のmRNA一分子追跡法を開発することができた。これを用いて、SGs内内在性GAPDH mRNAの一分子運動解析を行う。SGの形成を促すストレスとして0.5 mM sodium arseniteが多用されているが、細胞の生存率が低いこと、ストレスを解除した後にSGが消滅する細胞の割合が少ないという問題点がある。これを解決するために、細胞にヒートショックをかけてSGを形成することを試みる。
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