研究実績の概要 |
レチナールを発色団とするタンパク質は、総称してレチナールタンパク質(ロドプシン)と呼ばれる。生物の三大ドメインに万を越える種類が幅広く分布し、様々な光依存的機能を担っている。このような生物学的意義に加え、近年ではこれら多様なロドプシンを利用し、細胞や個体の機能を光で操作する技術(光遺伝学)が確立してきた。
本研究では、(1)レチナールタンパク質を様々な手法により根源的に理解し(知る)、(2)その知見に基づいた分子機能の改変・創成を行い(変える)、(3)さらには様々な生命科学研究に利用可能な光操作ツールを開発する(役立てる)ことを目的としている。
本年度は、それぞれの課題について、責任著者として以下の成果を得た:(1)知る:シアノバクテリアより、硫酸イオンを基質とする全く新しいタイプの光受容体を発見し、SyHRと命名した [JACS, 2017], また、好熱性真正細菌よりこれまでで最も安定なロドプシン(プロトンポンプ)を発見し、RxRと命名した [Sci. Rep., 2017b]。アニオンポンプの動作原理を分光学的に明らかにした [J. Phys. Chem. B, 2017]。(2)変える:アニオンチャネル型ロドプシンに点変異を導入することで、野生型に比べ活性を10倍に増強することに成功した [Sci. Rep., 2017a]。(3)役立てる:高熱細菌由来のロドプシンが、これまでで最も高いプロトンポンプ型神経抑制活性を示すことを動物個体で明らかにした [J. Biol. Chem., 2016]。
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