研究課題
高次脳機能を司る神経細胞のネットワークは、神経細胞同士が神経突起と呼ばれる構造を互いに伸ばし、シナプスを形成することによって成り立っている。神経突起を伸長するためには、細胞骨格の再構築に加えて、突起を伸ばすための脂質膜の供給(膜輸送)が不可欠であり、近年膜輸送の普遍的制御因子・低分子量G蛋白質Rabの神経突起伸長への関与が明らかにされつつある。これまで当研究室では、Rab35とそのエフェクター分子によるリサイクリングエンドソームから突起方向への膜輸送機構の存在を明らかにしてきたが、神経成長因子(NGF)などのシグナルを受けてどのような仕組みでRab35が活性化され、神経突起の伸長が促進されるのかは未だ全く解明されていない。そこで本研究課題では、PC12細胞を神経突起伸長のモデル系に用いて、Rab35の上流活性化因子(グアニンヌクレオチド交換因子GEF)を同定し、NGF刺激によるRab35活性化の分子基盤の解明に取り組んだ。本年度はまず、ヒトやマウスに存在する約40種類のRab-GEF候補のうち、in vitroでRab35-GEF活性を有すると考えられる4種類の分子(DENND1A-C及びFolliculin)に焦点を当て、培養細胞レベルでRab35の活性化を促進するか否かを、GTP-Rab35プルダウン法により検証した(Methods Mol. Biol., 2015)。その結果、DENND1A/Bの2種類の分子が細胞内で強いRab35-GEF活性を示すことが明らかになった。次に、特異的なsiRNAを用いてPC12細胞に内在性のDENND1A/Bのノックダウンを行ったところ、DENND1Aのノックダウンでのみ神経突起の伸長が顕著に抑制された。以上の結果から、DENND1Aが神経突起伸長時におけるRab35の上流活性化因子として機能している可能性が強く示唆された。今後、NGF刺激によりDENND1AのGEF活性がどのように制御されているのかを検討して行く予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、神経突起伸長のモデル細胞であるPC12細胞を用いて、神経突起伸長に関わるRab35の活性化因子の候補を同定することに成功するなど、当初の期待以上の成果を挙げることができた。
本年度に同定した神経突起伸長に関わるRab35の活性化因子候補・DENND1の機能解析を行う。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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http://www.lifesci.tohoku.ac.jp/teacher/t_fukuda/