研究課題
高次脳機能を司る神経細胞のネットワークは、神経細胞同士が神経突起と呼ばれる構造を互いに伸ばし、シナプスを形成することによって成り立っている。神経突起を伸長するためには、細胞骨格の再編成に加えて、突起を伸ばすための脂質膜や蛋白質の突起端への供給(膜輸送)が不可欠であり、近年膜輸送の普遍的制御因子・低分子量G蛋白質Rabの神経突起伸長への関与が明らかにされつつある。これまで当研究室では、Rab8、Rab11、Rab35などによるリサイクリングエンドソームから突起方向への膜輸送機構の存在を明らかにし、神経成長因子によるこれらのRabの活性化機構(例えば、Rabin8によるRab8/10の活性化機構)の一端を解明してきた。本年度は、Rab不活性化に関わるTBCドメインを持つ43種類のTBC蛋白質に着目し、TBC1D12が活性化型のRab11に特異的に結合してリサイクリングエンドソームに局在すること、及びRab11依存的に神経突起伸長の制御に関与することを明らかにした。興味深いことに、このTBC1D12による神経突起伸長制御にはRabの不活性化(GAP活性)は関与せず、むしろTBC1D12はRab11のエフェクター分子として機能することが示唆された(PLoS One, 2017)。さらに、神経突起伸長に関与する新規のRabを同定するため、siRNAによるRabの網羅的ノックダウンスクリーニングを行い、神経突起伸長を負に制御する新たなRabとしてRab20を同定することに成功した。すなわち、PC12細胞に内在性のRab20をノックダウンすると神経突起伸長が有意に促進されたが、逆に野生型Rab20や常時活性化型変異体の過剰発現により神経突起伸長は著しく阻害された(Neurosci. Lett., 2018)。このRab20による神経突起伸長の抑制はswitch II領域(エフェクター結合部位)のアミノ酸変異により消失することから、特異的なRab20エフェクター分子との結合がこの抑制効果には不可欠と考えられた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.lifesci.tohoku.ac.jp/research/teacher/detail.html?id=1724