研究課題
小胞輸送の最終ステップで起こる小胞膜と標的膜(エキソサートーシスの場合には細胞膜)の融合の特異性は、SNAREタンパク質の組合せによって決定されるというSNARE仮説が提唱されている。しかしこれまでの私たちの研究によれば、SNAREタンパク質間の認識は予想よりもはるかに曖昧であり、このような組合せだけで膜融合の特異性が決定されるとは考えにくい。一方、私たちは最近、小胞輸送の際に、繋留複合体のExocystがSNAREタンパク質と相互作用することによって、膜融合の特異性を決定する可能性を示すデータを得た。平成27年度には、私たちが新たに開発したタンパク質間相互作用解析法(VIPアッセイ;Visible Immunoprecipitation Assay)を活用して、8つのサブユニットからなるExocyst複合体の複雑な構築様式を解明した。さらに、VIPアッセイを用いて、SNAREタンパク質のうちのSNAP-23とSNAP-25が、Exocyst複合体のサブユニットのうちのSec6とSec8にそれぞれ結合することを見出した。Sec6とSec8はExocyst複合体のうちでコアを形成するサブユニットである。さらに、siRNAを用いたノックダウン実験によって、SNAP-23、SNAP-25、およびこれらが結合する相手方のSNAREタンパク質であるVAMP2が、Exocyst複合体の下流でトランスフェリン受容体のリサイクリングの過程で、リサイクリング小胞と細胞膜の融合の過程を媒介することを証明した。
2: おおむね順調に進展している
新たに開発したVIPアッセイを活用して、Exocyst繋留複合体の複雑な構築様式を解明するとともに、この複合体のサブユニットのSec6とSec8がSNAREタンパク質のSNAP-23とSNAP-25にそれぞれ結合することを証明した。さらには、SNAP-23、SNAP-25、およびこれらが結合する相手方のSNAREタンパク質であるVAMP2が、Exocyst複合体の下流でトランスフェリン受容体のリサイクリングの過程で、リサイクリング小胞と細胞膜の融合の過程を媒介することを証明した。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
平成28年度は次のような研究を行う予定である。・Exocyst繋留複合体とSNAREタンパク質の相互作用様式の解明これまでに、VIPアッセイを活用して、SNAREタンパク質のうちのSNAP-23とSNAP-25が、Exocyst複合体のサブユニットのうちのSec6、およびSec8とそれぞれ結合することを見出しているが、本年度は他のSNAREタンパク質のSNAP-29とSNAP-47がExocyst複合体のどのサブユニットと結合すのかをVIPアッセイによって明らかにする。さらに、私たちが独自に改良したCRISPR/Cas9システムによって、SNAREタンパク質をノックアウトした細胞を樹立し、様々なレスキュー実験を行うことによって、Exocyst複合体とSNAREタンパク質がトランスフェリン受容体のリサイクリング輸送の最終過程において果たす役割の解明を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件)
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